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低糖や低脂肪より健康に重要なのは種類

低糖質や低脂肪など、カロリーや量に関する食事法が話題ですが、

実はもっと健康にとって重要なのは、

食べ物の種類や品質だったという研究成果が

発表されました。

 

この研究はハーバード公衆衛生大学院の研究者らが

肥満、Ⅱ型糖尿病、心臓病、がんなどの疾患リスクと

食生活についての過去の研究データを解析したもので、

 

食事の総カロリーを減らすことは健康上のメリットがあるものの、

食事に占める脂肪と炭水化物の割合に関しては健康にとってそれほど重要ではなく、

現在明らかなのは、

●飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換える

●精製された砂糖や小麦などの炭水化物を全粒粉やでんぷん質の少ない野菜に置き換える

 

ということだということです。

この研究結果は、2018年11月16日の科学雑誌『Science』に発表されました。

 

Science  16 Nov 2018:
Vol. 362, Issue 6416, pp. 764-770
DOI: 10.1126/science.aau2096

ゆっくり明瞭に話すと記憶に残る

全く記憶に残らない授業、眠くなる講演、退屈で気が散ってしまう人の話がある一方で、心に残る話や講演もあります。なぜこのような差が生じるのでしょうか?

米国テキサス大学の研究によると、「話し方」が、聞き手の記憶に残るか残らないかの決め手になっているそうです。この研究では、被験者60名に、72の文章をゆっくりとはっきり明瞭な口調と、早口でカジュアルな口調で聞かせて、どちらの口調の方がより正しく記憶されているかについて比較しました。

その結果、ゆっくりとして明瞭な口調の方が、聞き手により正しく記憶されることが明らかになりました。

この結果の背景について研究者は、早口で聞き取りにくい口調の場合、何を話しているかを理解しようとする作業に脳を費やしてしまうために、記憶の統合に必要な脳のリソースが少なくなってしまい、記憶に留まりにくく、明瞭でゆっくりとした口調であれば、話を理解するための解析作業は必要なく、より効率的に記憶の統合に集中して脳を機能させることができるためではないかと分析しています。

この研究成果は、2018年11月に開催された第176回米国音響学会、カナダ音響協会で発表されました。

人工甘味料は腸内細菌に毒性を持つ

o0640048014279131380低カロリーで健康志向の人工甘味料ですが、腸内細菌叢に対して、悪影響を及ぼす可能性があるようです。これはイスラエルのネゲブ・ベン=グリオン大学と、シンガポールのナンヤン(南陽)工科大学の研究によるもので、2018年9月25日の『Molecules』で発表されました。

検証された人工甘味料の種類は、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム、アセルファムカリウムの6種類で、これらの人工甘味料を含むスポーツドリンク10種類についても行われました。

その結果、わずかな量のこれらの人工甘味料やそれを含むスポーツドリンクを摂取することによって、腸内細菌(腸内フローラ)に悪影響を及ぼすことが明らかになりました。

人工甘味料の毒性に関しては、以前から糖代謝異常、体重増加、土壌や地下水に対する環境汚染物質となる可能性についても様々な研究で指摘されています。

低カロリーで健康志向の人工甘味料ですが、その甘さには健康リスクと環境汚染リスクが伴っている可能性があるようです。

同じ遺伝子が友人関係のストレスを緩和し経済的なストレスを悪化させる

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セロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)は、

メンタルヘルス、特にストレス耐性やうつ病との関連性が指摘されています。

これはセロトニンの代謝に関係する遺伝子で、この遺伝子が短い型(SS型)の人は、

長い型(LL型)の人に比べて、ストレス耐性が低く、うつ病になりにくい

という研究結果が多数報告されています。

抗うつ薬の「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」は、

5HTTLPRの働きを阻害して、セロトニンの濃度を上昇させることで

うつ病の改善を狙って開発されました。

実はセロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)が、

若い世代には友人関係や社交面でのストレスに由来するうつ病を

予防する一方で、高齢になると5HTTLPRが経済的なストレスが

関係するうつ病の発症リスクを高めていることが明らかになり、

2018年10月にバルセロナで開催された「欧州神経精神薬理学会(ECNP)」で発表されました。

同じ遺伝子でありながら、人生のさまざまな悩みごとや年齢の違いで、

私たちの精神面に全く逆の影響を与えていることが興味深いですね。

European College of Neuropsychopharmacology, October 2018

10分程度の軽い運動(ヨガや太極拳)で記憶力が改善する

カリフォルニア大学アーバイン校と筑波大学の共同研究によると、健常な若年成人においても、
ヨガや太極拳などの軽い運動を短期間行うだけで、脳の短期記憶を司る海馬とその周辺領域野の活性を高め、記憶力を改善することが明らかになり、2018年9月24日号の『Proceedings of the National Academy of Science』で発表されました。
この研究は、健常な若年成人36人に、10分程度の軽度な運動を行わせて、運動後に脳のf-MRIを撮影し、脳のメカニズムに対する軽度な運動の影響を調べたものです。その結果、軽度の運動が海馬(の歯状回)と記憶処理に関する皮質領域が活性されることが発見され、記憶の形成と処理を行う領域の能力の向上が確認できたということです。
研究者らは今後、今回の結果を元に、高齢者の認知機能の維持、認知症の予防や治療に運動がどの程度効果があるかを検証していくと述べています。
Kazuya Suwabe, Kyeongho Byun, Kazuki Hyodo, Zachariah M. Reagh, Jared M. Roberts, Akira Matsushita, Kousaku Saotome, Genta Ochi, Takemune Fukuie, Kenji Suzuki, Yoshiyuki Sankai, Michael A. Yassa, Hideaki Soya. Rapid stimulation of human dentate gyrus function with acute mild exercise. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2018

セーフな飲酒量、アウトな飲酒量

【セーフな飲酒量、アウトな飲酒量…】2018年4月の『Lancet』に掲載された英国ケンブリッジ大学の研究によると、アルコール類を飲み過ぎると、脳卒中、動脈瘤、心不全などのリスクを高めることがわかり、1週間に摂取する安全な飲酒量の合計の上限は、純粋なアルコール量で週合計100㏄、アルコール度数4~5%のビールに換算すると500㏄の缶ビール4本、日本酒だと4合(720㏄)、ワインだとグラス7杯(800cc)程度だということです
この調査は世界19か国、約60万人の健康と飲酒習慣について解析した結果によるものです。
昔から酒は百薬の長と言われ適正な飲酒は心血管病のリスクを低下させますが、飲む量によっては毒にもなるわけです。今回の研究結果によると、週に純粋なアルコール量の合計が200㏄以上(500㏄の缶ビール20本、日本酒8合程度以上)を飲むと平均余命が1~2年短くなり、週に純粋なアルコール360㏄以上(を飲むと4~5年も平均余命が短くなるということです。百薬の長が命取りになる量まで飲み過ぎないように注意しましょう!(自戒を込めて翻訳)
【出典】Angela M Wood et al. Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies. The Lancet, 2018

孤独が心臓病や脳卒中のリスクを高める

孤独が心臓病と脳卒中のリスクを高めることが明らかになり、2018年3月の「Heart」という科学雑誌に掲載されました。この研究は、2007年~2010年に実施された英国バイオバンクの調査の一部で、40~69歳までの約48万人を7年間追跡調査した結果によるもの。7年間の間に12,478人が死亡し、5731人が初発の心臓発作を起こし、3471人が初発の脳卒中を起こしました。年齢、性別、人種などを調整して分析した結果、社会的孤立や孤独感が1.5倍、脳卒中のリスクを高めることが明らかになりました。研究者は、社会的に孤立している人や孤独感を持つ人は、喫煙率も高く、うつ病の発症も多いことなども影響し、急性心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まっていると考えられるため、社会的孤立や孤独感が危険因子の1つであることを社会的に広めていく必要性が明らかになったとしています。

Christian Hakulinen, Laura Pulkki-Råback, Marianna Virtanen, Markus Jokela, Mika Kivimäki, Marko Elovainio. Social isolation and loneliness as risk factors for myocardial infarction, stroke and mortality: UK Biobank cohort study of 479 054 men and women. Heart, 2018

脂肪と炭水化物の食べ分けを決める脳内ホルモンCRHはストレスに関係

自然科学研究機構生理学研究所 の研究によると、「脂肪と炭水化物の食べ分け」を決定する神経細胞を動物実験で同定し、2018年1月の「Cell Report」で発表されました。

 

この神経細胞は、 脳の視床下部に存在する「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin-releasing hormone: CRH)」 と呼ばれ、CRHは、ストレスを感じると、その刺激がCRHを作り出すニューロンに伝わり、CRHを分泌させることも明らかになっています。

 

マウスは通常、脂肪の多い食べ物を好みますが、CRHが大量に分泌されると、炭水化物を多く含む食事を好むようになるということで、CRHホルモンが、炭水化物のし好性を亢進させる働きを持つことが明らかになりました。

 

疲れや緊張感、ストレスを感じると糖分(炭水化物)が欲しくなるのも、CRHと関係しているかもしれませんね。

 

http://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(17)31786-2

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自撮りは鼻が大きく写る

米国ラトガース大学の研究で、スマホで近距離で自撮りをすると、鼻が大きく写ることが明らかになり、2018年3月1日のオンライン版「JAMA Facial Plastic Surgery」で発表されました。

この研究の発端は、鼻の整形手術を得意とする医師が、鼻の整形を希望する患者にヒアリングしたところ、自撮り写真に映った自分の鼻が気に入らずに、整形手術を希望する人が多いことに気がつき、スタンフォード大学の研究者と自撮り写真の鼻の歪みについて調べました。その結果、顔から約30センチくらいの至近距離で自撮りをすると、150センチ以上離れて撮影した場合よりも鼻の付け根は約30%、鼻の先端は約7%ほど、大きく写ることが判明しました。

研究者は自撮りの写真をみて自分の鼻が大きいことを悩まないようにとコメントしています。

Brittany Ward, Max Ward, Ohad Fried, Boris Paskhover. Nasal Distortion in Short-Distance Photographs: The Selfie Effect. JAMA Facial Plastic Surgery, 2018

 

 

にきびはうつ病リスクを高める

たかがにきび・・・と思わないで、悩んでいる人にとっては深刻な問題。悩んでいる人はまず皮膚科に行ってにきびをしっかり治しましょう!

にきび( 座瘡 )がうつ病の発症リスクを高めていることがカナダのカルガリー大学の研究で明らかになり、2018年2月の「British Journal Of Dermatology」に発表されました。

この研究には、英国の大規模な電子カルテのデータベースである「The Health Improvement Network(THIN)」の1986年~2012年までのデータが含まれており、研究では これらのデータを分析し、 にきび( 座瘡 ) と診断された人は、にきびと診断されていない人に比べて、1年以内にうつ病を発症するリスクが1.63倍も高いことが明らかになりました。

分析結果について研究者らは、深刻なにきびに悩む人にとっては、単なる皮膚疾患というだけでなく、にきびは精神的に重大な障害を引き起こす可能性があり、真剣に受け止めなければならないとし、 にきびの患者さんの気分障害や、不安障害などの精神症状を監視し、必要があればうつ病を疑い、精神科医と連携しながら迅速な治療を開始する必要があることを指摘しています。

I.A. Vallerand, R.T. Lewinson, L.M. Parsons, M.W. Lowerison, A.D. Frolkis, G.G. Kaplan, C. Barnabe, A.G.M. Bulloch, S.B. Patten. Risk of depression among patients with acne in the U.K.: a population-based cohort study. British Journal of Dermatology, 2018