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高齢者の物忘れを少なくする新たな学習法「注意力散漫法」とは?!

老化脳

Posted on 2013.2.28


 

加齢とともに集中力が衰え、新しいことを覚えるための記憶力も、自分の若い頃よりも低下することは知られています。

一方、さまざまな研究から、加齢に伴い高齢者の脳は記憶力を補完するために、意識的な努力をしなくても、周囲の環境にある必要な情報と雑音となる情報を処理することに関しては、若い人よりも熟達していることが知られています。

カナダ・トロント大学研究チームは、こうした加齢に伴い熟達するタイプの情報処理能力を生かすことで、低下する記憶力を補えるのではないかと考えて、実験を行い、その結果を、Psychological Science 2013年2月20日オンライン版に発表しました。

実験はトロント大学の学生(17~27歳)と高齢者(60~78歳)を被験者として単語リストを記憶し、直後にどれだけ覚えているかのテストを行うというものでした。

そして被験者には、事前に知らせずにテストの15分後に再度抜き打ちテストを実施するというものでした。

ただしこの15分間の間に、絵を見て行う非常に簡単な注意力テストが実施されました。

そしてこの注意力テストに使用されていた絵の中に、先ほどの記憶テストに出された単語の半数が、注意をそらす邪魔ものとして出現していました。

この後に、再度行われた抜き打ち単語テストの結果を分析したところ、学生のテスト結果には邪魔者として出現した単語は何ら影響を及ぼさなかったのに対し、高齢者は注意力テストの邪魔者として出た単語の記憶に関して、よく覚えていることが分かりました。

博士らは、 この結果から高齢者が何かを記憶しておくためには、記憶の助けとなるように周囲の環境に、注意力を散漫にさせる要素として、記憶すべきことを撒き散らかし ておくこと、たとえば部屋の中やケアハウスのあちこちに張り紙をしておくとか、テレビやタブレットPCの画面の下にいつも大事な情報を流し続けること(例 えば新幹線車内の電光掲示板のニュースのような)など、いわば「注意散漫学習法」とでも言うべき方法論が効果を持つことが分かったとしています。

Psychological Science 2013年2月20日オンライン版