コラムColumn

運動は脳と筋肉を鍛える

老化脳運動

Posted on 2026.5.22

運動で鍛えられるのは筋肉だけじゃない

――持久力を伸ばす「脳のスイッチ」を発見

運動を続けると、以前より長く走れたり、疲れにくくなったりします。これまでは、筋肉や心肺機能の向上がその主な理由と考えられてきました。しかし最新の研究によると、持久力を高めているのは筋肉だけではなく、脳の特定の神経細胞の働きである可能性が明らかになりました。

ペンシルベニア大学の研究チームは、学術誌 「Neuron 」に、運動後も活発に働き続ける脳細胞が、体のトレーニング効果を引き出していると報告しました。

研究では、マウスをトレッドミルで走らせたところ、視床下部腹内側核(VMH)という脳の領域にある「SF1ニューロン」が活性化し、運動終了後も1時間以上にわたって活動を続けていました。2週間のトレーニングを行ったマウスでは、走行距離や速度が向上し、明らかな持久力の改善が認められました。

ところが、この神経細胞の働きを遮断すると、マウスは通常どおり運動していても持久力が向上しませんでした。さらに驚くべきことに、運動中ではなく「運動後」の活動だけを止めても、トレーニング効果が失われたのです。

この結果は、運動後に脳が出すシグナルが、筋肉や心肺の回復と適応を促し、次の運動に備えて体を強くしていることを示唆しています。

「運動は筋肉を鍛えるだけでなく、脳も鍛えているのです」と研究者は述べています。運動後の脳の働きを理解することで、高齢者の体力維持やリハビリテーション、さらにはアスリートのパフォーマンス向上にも新たな道が開かれるかもしれません。

【出典】Morgan Kindel, Ryan J. Post, Kyle Grose, Louise Lantier, Eunsang Hwang, Jamie R.E. Carty, Lenka Dohnalová, Lauren Lepeak, Hallie C. Kern, Rachael Villari, Nitsan Goldstein, Emily Lo, Albert Yeung, Lukas Richie, Bridget Skelly, Jenna Golub, Manmeet Rai, Teppei Fujikawa, Julio E. Ayala, Joel K. Elmquist, Christoph A. Thaiss, David H. Wasserman, Kevin W. Williams, Erik B. Bloss, J. Nicholas Betley. Exercise-induced activation of ventromedial hypothalamic steroidogenic factor-1 neurons mediates improvements in endurance. Neuron, 2026; 114 (9): 1564 DOI: 10.1016/j.neuron.2025.12.033