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ビタミンAは寒冷刺激で脂肪燃焼を促進させる

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Posted on 2020.10.27

オーストリアのウィーン医科大学の研究で、気温が低くなると血中にビタミンAの量が増えることで、白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変えて、脂肪の燃焼効率を高めることが、ヒトとマウスの体内で確認され、2020年12月号の『Molecular Metabolism』に掲載されました。

白色脂肪細胞は脂肪をエネルギーに変える体内のあちこちにあるいわば「太りやすくする脂肪細胞」で、褐色脂肪細胞は脂肪を分解して熱(エネルギー)に変える「痩せやすくする脂肪細胞」です。褐色脂肪細胞は首、肩、鎖骨、肩甲骨などにあり、その数は年齢と共に減少していきます。年齢とともに代謝が落ちて太りやすくなる原因の一つに褐色脂肪細胞の減少があると言われています。

ウィーン医科大学の研究では、ヒトとマウスの実験で、周囲の温度が低くなると、肝臓に蓄えられているビタミンA(レチノール)を血中に運び出す役割のトランスポーター「レチノール結合タンパク質」の量が増え、その影響で全身の血中のビタミンAレベルが増加し、これが刺激となって白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に変換されて、褐色脂肪細胞の量が増えることが確認され、さらに脂肪燃焼の割合が高くなったということです。

この研究成果は、ビタミンAが脂肪細胞の機能に重要な役割を果たし、 ビタミンAが寒冷条件で脂質の燃焼と発熱を調節しているという新しいメカニズムを発見しました。このメカニズムを活用すれば新しい治療的介入の開発に役立つ可能性があります。

【出典】 Anna Fenzl, Oana Cristina Kulterer, Katrin Spirk, Goran Mitulović, Rodrig Marculescu, Martin Bilban, Sabina Baumgartner-Parzer, Alexandra Kautzky-Willer, Lukas Kenner, Jorge Plutzky, Loredana Quadro, Florian W. Kiefer. Intact vitamin A transport is critical for cold-mediated adipose tissue browning and thermogenesis. Molecular Metabolism, 2020; 101088 DOI: 10.1016/j.molmet.2020.101088