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拒食症モデルの死と「食べたらごほうび」の効用

教育、子育て食

Posted on 2011.1.2

 



自らの拒食症を告白し、27キロにやせ細ったヌード写真を公表して人々に衝撃を与え、拒食症の撲滅キャンペーンに尽力し、話題を呼んだフランス人モデルのイゼベル・カロさんが、28歳の若さで亡くなりました。

カロさんは、複雑な家庭環境の中で育ち、少女時代は実の母親に、カロさんが「大きくならないように」と軟禁状態で育てられ、自由を奪われ、食事を制限されて8歳までオムツをつられて、洗脳されて育ったそうです。

カロさん自身も母親の洗脳から抜け出せずに「自分が成長せずに、小さいままでいれば、母親は幸せになれる」と思い込んで、その呪縛から解き放たれずに、拒食症を患い、とうとう命を落としてしまったのです。

拒食症は11歳~20歳頃に多く、約6%の患者さんが命を落とし、その半分が自殺だそうです。カロさんも13歳から拒食症になり、病院を入退院する月日が続いたとのこと。

自分の母親の幸せを思って、成長を拒み、拒食症になってしまったカロさんの話を聞くと、食習慣と心理が密接に関連していることがわかります。

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イギリスのロンドン大学公衆衛生学所属のJane Wardle博士らの研究によると、嫌いなものを子供に食べさせる時の「ごほうび」には、ある程度は健康的な食習慣を身につけさせる効果があることが、オンライン版のPsychological Scienceの2010年12月29日号で発表されました。

以前から、食事に関する子供のしつけ、特に野菜嫌いを克服させるために、「ごほうび」を与えて教育することが、子供の内因性の動機付け(子供自身が野菜を食べようと思うようになること)を蝕んでしまう可能性があるという意見があり、しばしば議論されていました。

この研究では子供たちに嫌いな野菜を食べさせようとするしつけをするときに、もし子供が食べられたら、食べた時に、具体的に物理的なごほうびを与えた場合、社会的なごほうびを与えた場合、報酬を与えなかった場合を比較、さらに、そのような食習慣改善に関するしつけを行わなかった場合とも比較しました。

その結果、ごほうびを与えられたグループは、何もしつけをしなかったグループに比べて、嫌いな野菜を食べる量が増え、その効果は実験終了後も、3ヶ月間続いたそうです。

この結果から博士らは、食習慣のしつけとごほうびの関係は、必ずしも悪い効果だけではなく、健康的な食習慣を身につけさせるために有用なのかもしれないと述べています。

December 29, 2010, doi: 10.1177/0956797610394662 Psychological Science December 29, 2010

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やはり、この実験からも、子供の食習慣に、親の影響が大きいことがわかりますね。健康的な食習慣で過ごす親にきちんとしつけられていればいいのですが、カロさんのように、親自身が歪んだ考えで、子供に歪んだ食習慣を見に付けさせてしまうと、子供はその後の人生を、長い間、悩み苦しまなければならないということです。