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【ライフスタイル】子供の頃の音楽教育は生涯の脳機能改善に役立つ

教育、子育て

Posted on 2011.4.22

ILLUSION inc米国・カンザス大学メディカルセンターのBrenda Hanna-Pladdy博士らが、Neuropsychology2011年4月4日オンライン版に発表した研究で、子供の頃に音楽教育を受け楽器を 習っていた人は、大人になってから楽器を演奏することがなくても、子供の頃に楽器の訓練を受けていない人に比べて、高齢になってからも脳の認知機能が高く 維持されていることが明らかになりました。
博士らは70人の健康な高齢者(60歳から83歳)を対象に調査しました。70人の高齢者は年 齢、学歴、運動経験がほぼ同様であり、認知症の兆候が一切なく、包括的な神経心理学的なテストの組み合わせを受けて現在の認知能力が測定されました。そし て彼らを音楽的訓練、すなわち楽器を習った経験の有無と年数によって3グループ(①ゼログループ=全く経験なし、②低グループ=楽器の教育訓練歴1-9 年、③高グループ=楽器の教育訓練歴10年以上)、に分け認知機能のレベルが比較されました。
調査対象高齢者の音楽経験者は、全員アマチュアであり、平均して10歳頃に楽器を習い始め、半数以上がピアノ、4分の1がフルートやクラリネットなどの木管楽器、残りの少数が弦楽器、金管楽器、打楽器を習っていました。
データを分析した結果、認知能力の高さは楽器歴が高グループ、低グループ、ゼログループの順で、楽器のトレーニング歴の年数が長いほど、認知能力が高いことが 明らかになりました。特に高グループは視空間記憶、名称記憶、認知の柔軟性、脳の新奇な情報に適応する能力に関して、ゼログループより統計的に有意に高いことが明らかになりました。
この結果から博士らは、これまでの研究から楽器の習得には子供の頃に開始し、かつある一定の期間継続することが 重要であることが知られていましたが、今回の研究でそうした訓練で発達した脳の認知能力が、音楽だけでなく全体として一生涯に渡って保持され、脳に好影響 を残すことが明らかになったとしています。