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幼少時のいじめられた経験が成人後の自殺願望を高める

教育、子育て

Posted on 2013.3.3

 


子供の頃にいじめられた経験が、20代以降にパニック障害、広場恐怖、不安症などを引き起こすリスクを3~5倍も高くしてしまうことが、アメリカデューク大学ウィリアム・E・コペランド博士らの研究で。オンライン版JAMA Psychiatryに掲載されました。
この研究は、米国ウエストノースカロライナで行われた1420人の9歳、11歳、13歳が参加した「Great Smoky Mountain Study」という3つのコホートスタディを分析したもの。
この研究結果を、社会経済的な状況、不安定な家庭環境、しつけの悪さなどを調整後、被験者の子供たちが19歳~26歳に成長した時点で面接調査を行いました。
調査結果によると、26%の子供が一度はいじめられ、9%が複数回いじめられていました。さらに10%がいじめをしたと申告し、5%がいじめもし、いじめられもしたと回。22%はいじめられただけだと回答しています。
注目したいのは、いじめだけをしていた子供は5%ですが、その子供たちが、反社会的な人格障害傾向であるリスクは、いじめたことのない子供に比べて4.1倍も高かったのそうです。
結果を簡単に報告すると、子供のときにいじめられた経験を持つ子供は、いじめられた経験がない子供に比べて、うつ病になるリスクが4.8倍、広場恐怖症が4.6倍、パニック障害のリスクが3.1倍、不安症になるリスクが2.7倍も高いということです。
さらにいじめられた経験を持つ男の子は、成長してから自殺傾向が18.5%も高まっていたそうです。
この結果について研究者らは、いじめを長期的に受けることによって、考えられる可能性として、ストレスにさらされ続けることによる心理的な反応の変化、常に脅されている環境にさらされたことによる認知機能の変化、情動障害と、遺伝子の脆弱性による相互作用などによって、テロメアの長さや遺伝子機能の変性にも関係している可能性を指摘しました。
Copeland WE, et al "Adult psychiatric outcomes of bullying and being bullied by peers in childhood and adolescence" JAMA Psychiatry 2013; DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2013.504.