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【ライフスタイル】睡眠不足や時差ぼけは視覚的な注意力の反応速度を低下させる

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Posted on 2012.7.29

jizaboke睡眠不足が学習能力の低下や、注意力の低下をもたらすことは、多くの人が経験していることではないでしょうか。2晩続けての徹夜な ど、極端な場合は能力の低下を来たすことが明らかですが、一般に推奨されている8時間睡眠よりも短い5時間、6時間程度の睡眠は、平日勤務の都会のサラ リーマンならごく普通の生活パターンであるといってもよいかもしれません。
その程度の睡眠不足がさほど能力の低下を招いているという自覚は ないかもしれませんが、米国・ハーバード大学医学部のJeanne F. Duffy博士らがThe Journal of Vision.2012年7月26日オンライン版に発表した研究で、毎日5~6時間程度の睡眠を続けたり、睡眠時間のサイクルを狂わせたりすると、例えば 航空管制や新幹線の運行管理、発電所の制御システムなどのような1度に多くの視覚情報に注意し、処理する作業の反応速度が低下することが明らかになりまし た。
博士らは12人の被験者を対象に1ヶ月間実験を行いました。実験は睡眠時間や就寝時間を変化させた上でコンピュータを使用した視覚認知作業(複数の視覚的な刺激を一度に処理するもの)を行わせ、正確さと反応時間を調査し、睡眠時間との関係を分析しました。
被験者は最初の1週間は睡眠時間が毎晩10~12時間、次の3週間は5~6時間の睡眠時間でした。この後期の3週間では1日の時間サイクルを被験者には内緒で28時間にして、人工的に時差ぼけの状態を作り出し、その影響も分析されました。
デー タを分析した結果、起きている時間が長く睡眠時間が短いと視覚認知において重要な情報を見逃すようになることが明らかになりました。また被験者自身には知 らせていないことによる時間のずれによる結果、本来は睡眠時間にあたる午前零時から午前6時には反応速度が遅くなることもわかりました。
こ の結果について、本人が自覚していなくても睡眠時間の短縮や生物時計が眠るべき時間に作業をすることは視覚認知反応速度を遅らせることが明確であり、航空 管制や運行管理、大規模プラントのオペレーションなどに従事する作業に関しては、このことを十分に考慮する必要があるとしています。