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便移植は帝王切開出産児の腸内細菌叢を回復

その他女性教育、子育て

Posted on 2020.10.28

便(糞便)移植は健康な人の便に含まれる腸内細菌を抽出して、潰瘍性大腸炎やクローン病などの病気がある患者さんに投与する治療法で、腸内フローラ移植、腸内細菌叢移植とも呼ばれ、英語ではFacal Microbiota Transportation (FMT)と言います。その方法には、ドナーの便から腸内細菌を抽出して菌液を作製し、大腸内視鏡、経腸カテーテル、経口カプセルなどで患者の腸に生着させる方法などがあります。

経腟分娩で生まれた赤ちゃんは、出産時に母体から腸内細菌、真菌などを受け取ることで正常な腸内細菌叢が作られると言われていますが、帝王切開で生まれた赤ちゃんの場合、母親から受け取る腸内細菌が少ないために、正常な腸内細菌叢の発達にマイナスであると言われています。

フィンランドのヘルシンキ大学の研究によると、帝王切開で出産した赤ちゃんに、便移植で母親の腸内細菌叢を移植することで、経腟分娩で生まれた赤ちゃんと変わらない程度の腸内細菌叢に発達することがわかり、国際科学雑誌『Cell』の2020年10月1日号に掲載されました。この研究に参加したのは、出産間もない母子17組で、そのうち7組が帝王切開で生まれ、赤ちゃんのお腹の腸内細菌の数が少ないことが確認できました。そこで、7人の赤ちゃんの母親の便を移植(FMT)したところ、 乳児の腸内細菌叢のコロニー形成と発達が、経腟出産の乳児と変わらない状態にまで発達したことがわかりました。FMTを行わなかった帝王切開出産の乳児の腸内細菌叢は、経腟出産の乳児に比べて未発達のままでした。

この結果について研究者は、母親の便に含まれる 潜在的な病原体について注意深くスクリーニングし、安全性を確認した上でFMTを実施すべきだと注意した上で、この簡単な手順によって帝王切開で生まれた乳児の腸内細菌叢のコロニー形成と発達を正常化でき、未発達の腸内細菌叢がもたらす可能性のある腸疾患や自己免疫疾患などの慢性疾患を発症するリスクが低下させる可能性があると述べています。

【出典】 Katri Korpela, Otto Helve, Kaija-Leena Kolho, Terhi Saisto, Kirsi Skogberg, Evgenia Dikareva, Vedran Stefanovic, Anne Salonen, Sture Andersson, Willem M. de Vos. Maternal Fecal Microbiota Transplantation in Cesarean-Born Infants Rapidly Restores Normal Gut Microbial Development: A Proof-of-Concept Study. Cell, 2020; DOI: 10.1016/j.cell.2020.08.047