コラムColumn

自分を許すことが難しいのはなぜ?

その他心理脳

Posted on 2025.8.24

自分を許すことは、単に過去を忘れることではなく、深い道徳的な傷に向き合い、主体性やコントロール感を取り戻す複雑なプロセスであることが明らかになりました。

オーストラリアのフリンダース大学の研究チームは、2025年8月11日に発表された研究成果を、心理学誌 「Self and Identity 」に掲載しました。

研究では、過去の出来事に対する罪悪感や恥を抱く80人の体験を比較し、自分を許せた人と許せなかった人の違いを分析しました。結果、自分を許せない人は出来事を鮮明に記憶し、何度も思い返して強い感情に苦しむ傾向がありました。一方、許せた人も感情は残るものの、その強さや頻度は減少し、人生を支配されなくなっていました。自己許しには、自らの限界を受け入れ、未来志向の価値観と再び結びつく努力が必要であり、多くの場合、他者からの支援も不可欠です。

筆頭著者のリディア・ウッディアット教授は、この知見がメンタルヘルス支援や犯罪行為の更生理解に役立つと強調し、共同研究者のメリッサ・デ・ベル=パルンボ博士も、人々が罪悪感や責任感と共に生きる過程を知るうえで貴重な資料になると述べています。本研究は、心理的回復と道徳的修復の道筋を科学的に示し、社会全体における心のケアや再犯防止策への応用が期待されます。

【出典】 Lydia Woodyatt, Melissa de Vel-Palumbo, Anna Barron, Christiana Harous, Michael Wenzel, Shannon de Silva. What makes self-forgiveness so difficult (for some)? Understanding the lived experience of those stuck in self-condemnation. Self and Identity, 2025; 1 DOI: 10.1080/15298868.2025.2513878