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森林破壊が蚊を吸血に導き人間への感染リスクを高める
その他病気老化
Posted on 2026.1.22
森林破壊は生きものを減らすだけではなく、蚊の行動形態を変え、人間への感染症リスクを高めている可能性があることが、ブラジルの研究で明らかになりました。研究成果は、生態学分野の国際誌 「Frontiers in Ecology and Evolution」 に掲載されています。
調査の舞台となったのは、かつて豊かな生物多様性を誇ったブラジルの大西洋岸森林です。この森林は開発によって本来の約3分の1にまで縮小し、人間の居住地が深く入り込んでいます。研究チームは、森林に隣接する自然保護区で蚊を捕獲し、雌の蚊がどの動物から吸血しているのかをDNA解析で調べました。
その結果、吸血源として最も多かったのは人間でした。確認できた吸血対象の約7割がヒトで、鳥類や両生類、げっ歯類などは少数にとどまりました。複数の動物から吸血する「混合吸血」を行う蚊も確認され、野生動物と人間の間でウイルスを媒介する可能性が示されました。
研究者は、森林破壊によって本来の宿主であった野生動物が減少し、蚊が「身近で確実な血液源」である人間に適応していると考えています。これは単なる不快感の問題ではありません。調査地域では、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱などのウイルスを媒介する蚊が生息しており、人への依存が強まることで感染症の拡大リスクが高まります。
この研究は、環境破壊が静かに疾病の流行構造を変えていることを示しています。森林を失っても蚊は消えず、むしろ人間に近づく――生態系の変化が公衆衛生に直結する現実を、改めて浮き彫りにした研究と言えるでしょう。
【出典】
Dálete Cássia Vieira Alves, Sérgio Lisboa Machado, Júlia dos Santos Silva, Nathália Menezes de Almeida, Rayane Dias, Shayenne Olsson Freitas Silva, Jeronimo Alencar. Aspects of the blood meal of mosquitoes (Diptera: culicidae) during the crepuscular period in Atlantic Forest remnants of the state of Rio de Janeiro, Brazil. Frontiers in Ecology and Evolution, 2026; 14 DOI: 10.3389/fevo.2025.1721533
