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【食】経済・貿易の自由化で肥満とファーストフードが増える

肥満食

Posted on 2011.12.28

アメリカミシガン大学公衆衛生学科のRobert De Vogli准教授らが、同大学発表ニュースリリースに掲載した研究によると、経済や貿易の自由化によって、市場も経済も拡大成長するものの、ファーストフード店が増え、人々も肥満によって「拡大成長」してしまうことが明らかになりました。
この研究では、「自由貿易政策」を推進するアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの国々と、「制限貿易政策」を取る日本とノルウェーの比較。研究では26か国を対象に、人口 10万人当たりのファーストフード店の数と、肥満者の割合を比較しました。ファーストフード店の数は、10万人当たり、アメリカが7.52店、カナダが 7.43店で、肥満者の割合はアメリカ男性が31.3%、女性が33.2%、カナダの男性が23.2%、女性が22.9%でした。
その一方で、日本とノルウェーのファーストフード店の数は10万人当たり日本が0.13店、ノルウェーが0.19店で、日本の肥満率は男性が2.9%、女性が3.3%、ノルウェーの男性が6.4%、女性が5.95でした。fastfood
今回の研究では、都市部と非都市部、パソコンの利用率、クルマの利用率、収入などについて考慮していません。研究者らは、今の予防医学は遺伝子や個人個人のさまざまな病気を引き起こす細かい要因にばかり注目しすぎており、社会構造やその中における、人の社会行動の研究に対して軽視しすぎていると指摘しています。
1980年以降に推進された貿易の自由化によって、どこに行っても同じ味が楽しめるようにと、食のグローバル化が進み、ファーストフード店が世界を席巻し、便利になっています。この研究でも「制限貿易政策」を取るレアな国として掲げられた日本ですが、今まさにTPPという大きな決断の時が来ています。国の利益や経済成長の議論も大事ですが、そこには「肥満」という"副作用"があることも忘れてはならないと思います。