コラムColumn

歩幅が小さく、ずり足、がに股などの歩行障害と高齢者の水頭症

病気脳

Posted on 2009.9.16



高齢者にも水頭症があることはあまり知られていません。高齢者の水頭症は「突発性正常圧水頭症(iNPH)」という病名で、日本国内に約31万人ほどいる可能性があることがジョンソン・エンド・ジョンソンの調査報告として発表されました。

通常、脳は外側からの刺激や衝撃を直接受けないように保護するために、クモ膜の下側を脳脊髄液が毎日450mlも作られて循環しています。しかし、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、クモ膜下出血、脳腫瘍、頭部の外傷などで髄液の循環が悪くなり、脳に髄液が必要以上に滞留してしまうことで脳を圧迫し、機能障害が生じることがあり、これを「突発性正常圧水頭症(iNPH)」と呼びます。微小な脳梗塞がたくさんできることによって血行が悪くなり脳が硬くなることで、髄液の流れが悪くなることもあります。

「突発性正常圧水頭症(iNPH)」のおもな症状は次のようなもの。
■歩行障害
・小刻みな歩み、すり足で足を上げない
・足が外股になる
・転倒しやすい

認知症
・物忘れ
・ぼんやりして、趣味などに関心がなくなる
・呼びかけても反応が鈍い
・集中力の低下

■尿失禁(我慢できずに失禁する)

■表情が乏しく声が小さい

これをみると、認知症パーキンソン病に症状が非常によく似ているために、水頭症を見逃してしまう可能性があります。

しかし高齢者の水頭症は、早めに発見して手術を行えば、歩行障害や認知障害、尿失禁などの症状もなくなることが多い病気です。

手術(髄液シャント術)は、乳幼児の水頭症と同様に、脳に溜まった髄液を排出するように調節するバルブや管を皮下に目立たないように通します。脳外科で行う一般的な手術ですし、約1時間ほどで終わり、入院期間も1週間ほどです。

手術を受けて症状が治まった患者さんには、認知症パーキンソン病と思われていた人もおり、認知症、歩行障害、尿失禁などの症状があった場合に、疑われる病気として水頭症もありうることを知っておいたほうがいいでしょう。

私自身も老人ホームで書道を教えていますが、ひとことで認知症と言っても、ものすごくいろいろな症状(特に歩き方や筆の持ち方など)をお持ちの方が多く、このニュースリリースを読んで、歩き方が水頭症の症状に当てはまる人が思い浮かび、もしかしたら水頭症の方もいらっしゃるのかも・・・と思いました。

詳細については専門のHPがありますので、ぜひ一度読んで下さい。