コラムColumn

【メディカル】自分の幹細胞1個で傷ついた大腸を再生する新技術

病気

Posted on 2012.3.13

daichouたった1個の健康な大腸の上皮細胞を体外に取り出して培養し、これを体内の潰瘍などで傷ついた大腸の上皮に移植することで、大腸を修復・再生できる技術を、東京医科歯科大学大学院・消化器病態学分野の渡辺守教授、同・消化管先端治療学講座の中村哲也講師の研究グループ、オランダ・ Hubrecht 研究所のHans Clevers博士らが共同で開発したことが、Nature Medicine2012年3月12日付のオンライン版に発表されました。
今回の研究では、マウスの正常な大腸上皮細胞を取り出して、数か月にわたって培養した結果、培養して生まれた細胞には、大腸上皮にある全タイプの細胞があり、その中には全タイプの細胞を生み出すことができる万能細胞が数多く含まれていました。
さらに研究者らは、培養細胞を、大腸上皮に損傷があるマウスに移植したところ、欠損部分が修復され、移植後6か月を超えても移植細胞がきちんと生着していることが確認されました。
大腸の上皮は、細菌や異物の侵入をブロックするバリア機能などを持っています。大腸上皮に潰瘍などの損傷ができることで、大腸上皮が本来持っているバリア機能が低下し、さまざまな病気にかかりやすくなりますし、大腸がんが発生しやすい場所でもあります。また10~20代の若い世代に発症する「クローン病」や「潰瘍性大腸炎」は、炎症などによって、大腸上皮が広範囲にわたって損傷してしまう難病です。研究者らは、このようながんや難病の治療に、今回の技術が生かせる可能性は十分にあると述べています。