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高脂肪食が大腸がんを引き起こすメカニズム

病気肥満食

Posted on 2019.11.29

米国ニュージャージー州のラトガース大学脂質研究センターの研究で、高脂肪食が大腸がんを引き起こすメカニズムが明らかになり、2019年11月の『Gastroenterology』で報告されました。大腸がんは、米国で3番目に多発しているがんで、2019年は推定10万1千人が大腸がんと診断されています。また大腸がんを引き起こす原因として、高脂肪食が指摘されています。腸の幹細胞の遺伝子である肝細胞核因子4(HNF4)は、細胞の分化に重要な役割を持ち、肝臓の発生に必要不可欠であること以外に、HNF4が脂肪酸に結合する転写因子であることから、細胞のエネルギー代謝にも関係していることが過去の研究から明らかになっています。マウスを用いた今回の研究では、高脂肪食によって、腸内のHNF4AおよびHNF4Gという遺伝子の機能が活性化し、細胞も増殖するため、大腸がんの感受性が高まる可能性があることを指摘しました。さらに、この2つの遺伝子の機能低下や消失によって、腸の幹細胞も消失することも明らかにしました。大腸の内側の表皮細胞は、皮膚の表皮細胞のように早いサイクルで新陳代謝を繰り返しているため、新しい細胞を生み出す腸内の肝細胞は、腸を正常な状態に維持するために、重要な役割を担っています。研究者らは、今後の研究で高脂肪食が、HNF4AおよびHNF4Gの機能にどう影響を及ぼして、それが大腸がんリスクにどう影響するかを、より具体的に調べていくと述べています。

Lei Chen, Roshan P. Vasoya, Natalie H. Toke, Aditya Parthasarathy, Shirley Luo, Eric Chiles, Juan Flores, Nan Gao, Edward M. Bonder, Xiaoyang Su, Michael P. Verzi. HNF4 Regulates Fatty Acid Oxidation and is Required for Renewal of Intestinal Stem Cells in Mice. Gastroenterology, 2019; DOI: 10.1053/j.gastro.2019.11.031