コラムColumn

新型コロナウイルス感染症サイトカインストームの謎

病気

Posted on 2020.9.8

新型コロナウイルス感染症によって「サイトカインストーム」、「免疫の暴走」、つまり自分を守りウイルスや細菌を攻撃するための免疫の働きが強すぎて、自身の細胞を攻撃してしまい、これが原因となって症状が増悪する症例が世界中で数多く報告されています。一方で新型コロナウイルス感染症の「サイトカインストーム」に関する明確な数値基準がなく、多くの場合、異なるサイトカイン物質が測定・評価され、他の疾患との比較は行われていませんでした。2020年9月4日の医学雑誌『Journal of American Medical Association(JAMA)』に掲載されたオランダのラドバウド大学の研究によると、新型コロナウイルス感染症患者に見られる「サイトカインストーム」は、通常の疾患が原因の急性呼吸促迫症候群(ARDS)や敗血症性ショックよりも、放出されるTNF-αやIL-6、IL-8などのサイトカイン物質の上昇レベルが低いことが明らかになりました。さらに、新型コロナウイルス感染症患者のサイトカイン物質の上昇レベルは、外傷もしくは心停止を伴う患者と同等のレベルであったということです。研究者らは新型コロナウイルス感染症患者に認められるサイトカインストーム様の重篤な症状は、血中の炎症性タンパク質のレベルが上昇したことが原因であることでは説明がつかないと述べています。

【出典】Matthijs Kox, Nicole J. B. Waalders, Emma J. Kooistra, Jelle Gerretsen, Peter Pickkers. Cytokine Levels in Critically Ill Patients With COVID-19 and Other Conditions. JAMA, 2020; DOI: 10.1001/jama.2020.17052