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コロナ感染はテロメアを短くして細胞老化と細胞死を引き起こす

病気老化

Posted on 2021.1.31

スペイン国立がんセンターの研究によると、重度のコロナ感染症患者のテロメアが大幅に短くなっていることがわかり、2021年1月11日発行の『Aging』に研究成果が掲載されました。

老化のメカニズムの1つとして「テロメアの短縮」というものが知られています。テロメアは細胞内にある染色体を保護する機能を持ち、細胞分裂のたびに短くなり、損傷を受けると細胞分裂が停止します。細胞は組織を再生するために、絶えず細胞分裂を繰り返していますが、テロメアが短すぎると細胞分裂が停止して、細胞が老化・死滅します。人は誰でも年齢を重ねるうちにテロメアが短くなっています。加齢以外にも病気や生活習慣などの影響でテロメアが短くなることも明らかになっています。逆にテロメアを長くする酵素である「テロメラーゼ」の産生を高めることで、老化を遅らせることができることも研究で明らかになっています。

コロナ感染症に関しては、より短いテロメアを持つ可能性が高い高齢の患者に、高い重症化率、死亡率が認められることからも、もともと短くなっていたテロメアに、COVID-19感染の結果として起こったテロメアの短縮作用が重なって、細胞の再生能力が失われて肺や腎機能の低下による後遺症や命の危険を引き起こしている可能性があることが推察されます。

新型コロナウイルスが肺の細胞の再生に関与している肺胞上皮細胞に感染すると、肺の組織再生を妨げて肺線維症を誘発することが明らかになっていることから、今回の研究ではウイルス感染した肺の病変組織を調べたところ、細胞内のテロメアが短くなっているのを発見しました。さらに年齢に関係なく、重症度が高い患者のテロメアほど、短くなっていることも明らかになりました。研究者は、今回の研究成果によってウイルス感染によるテロメアの損傷を修復するテロメラーゼの開発が、コロナ感染患者の治療薬として有効になる可能性を指摘しています。

【出典】

Raul Sanchez-Vazquez, Ana Guío-Carrión, Antonio Zapatero-Gaviria, Paula Martínez, Maria A. Blasco. Shorter telomere lengths in patients with severe COVID-19 disease. Aging, 2021; DOI: 10.18632/aging.202463