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過剰な食品衛生管理がアレルギーを引き起こす?

病気食

Posted on 2021.2.2

過剰な食品に対する品質管理システム、衛生用品の使用、加工食品の増加が、食物アレルギーを増加させているという指摘が米国イェール大学の研究で明らかになり、2021年1月14日発行の『Cell』に掲載されました。

 

食物アレルギーは30年以上にわたり先進国で増加しています。たとえば米国の子どもの約8%が牛乳、木の実、魚介類などのアレルギーを経験しています。研究者は、すべての動物が生物学的に保持する食物に対する食品管理プログラム、たとえば嫌な臭いがすれば食べない、苦い味で不味ければ食べないなどの味覚や嗅覚の感覚器で危険な食べ物の選別をしていること、腸内にも毒素を検出して排出する機能があることなどに着目しました。そして先進諸国では寄生虫やばい菌などの自然の脅威が少なくなっているために、古くから私たちの体に備わっている危険な手べ物を排除する免疫システム、神経システムが誤作動を起こして、無害なタンパク質を危険な食べ物と誤認してアレルギー反応を起こしているのではないかという仮説を立てました。この仮説は、農村部に住む人々は都会部よりもアレルギーを発症する人が少ないという理由を説明することにはなりました。さらに他の要因として研究者は、衛生用品の過剰な使用と、抗生物質の多用、自然に育てられた食品摂取の減少、食品保存料などを使った加工食品の大量消費により、腸内細菌の組成が変化したことも、毒性に対する免疫反応を誤作動させる結果となり、それが食物アレルギーを増やしている可能性があると述べています。

 

【出典】

Esther B. Florsheim, Zuri A. Sullivan, William Khoury-Hanold, Ruslan Medzhitov. Food allergy as a biological food quality control system. Cell, 2021; DOI: 10.1016/j.cell.2020.12.007