コラムColumn
アルツハイマー病リスクの告知が感情と健康行動に与える影響
病気老化脳
Posted on 2025.5.11
2025年5月7日に発表された、アメリカのラトガーズ大学とイスラエルのシェバ医療センターによる共同研究によると、アルツハイマー病のリスクを知ることは、リスクが高い人・低い人に関係なく不安や抑うつを軽減する一方で、健康意識や生活習慣の改善意欲を高める効果はみられなかったことが明らかになりました。
研究では、199人の健康な成人を対象に、アミロイドβの蓄積をPETスキャンで評価し、告知前後の心理状態や生活意識を調査しました。その結果、脳内に蓄積があった人もなかった人も共通して、不安や記憶への懸念は減少しましたが、生活改善への動機づけはむしろ低下しました。
研究者は、リスクを知ることで一時的に安心するものの、「何をしても予防できないかもしれない」という無力感が継続的な行動を妨げる可能性があると指摘しています。今後は、リスクの伝え方と併せて、健康行動を支援する心理的・行動的な介入が重要になります。
【出典】 Sapir Golan Shekhtman, Michal Schnaider Beeri, Ramit Ravona Springer, Maya Zadok, Mery Ben Meir, Yael Rosen‐Lang, Revital Shutsberg, Dar Gelblum, Tal Niv, Adar Matatov, Anthony Heymann, Joseph Azuri, Ithamar Ganmore, Chen Hoffman, Liran Domachevsky, Orit H. Lesman‐Segev. Emotional response to amyloid beta status disclosure among research participants at high dementia risk. Alzheimer's & Dementia, 2025; 21 (5) DOI: 10.1002/alz.70115