コラムColumn

不安症の人は携帯電話に依存する

心理

Posted on 2009.6.25

 
自分は不安症だと思う人々を対象に行った調査で、彼らが携帯電話に依存したり、携帯電話を濫用している、と回答した割合が非常に多いことを、米国不安障害学会の総会で、フロリダ大学のリサ・メルロ博士と、アマンダ・ストーン博士がポスター発表しました。

不安症の人々は、電子機器の普及で「自分が他人と常に交信可能な状態にいないといけない」というプレッシャーを強く感じるようになり、「携帯電話嗜癖(しへき)」ともいえる症状を示したり、携帯電話への異常な執着を示しています。
例えば強迫神経症の人が携帯電話を使って物事を確認するように、不安症の人たちも携帯電話を使って心の健康を管理しようとしているように見えます。
調査は平均30.4歳の18歳から75歳までの男女で、携帯電話使用歴が平均7.2年の183人の被験者(そのうち66%が女性で36%は学生)を対象に、携帯電話や携帯機器への依存に関する質問24個と、携帯電話や携帯機器の濫用に関する質問14問、合計38問に回答してもらいました。回答は「大いにそう思う」が5点で、「まったくそう思わない」が0点の5段階選択形式をとりました。
携帯電話依存の質問は以下のとおり:
・携帯電話の電波が弱いところにいるとリラックスできない。
・自分は携帯電話に時間を費やしすぎている。
・長い時間電話が鳴らないと、携帯電話のスイッチを確認してしまう。
この結果、回答者の平均スコアが62.6±18.5点で、最低が26、最高は117点の正規分布を示しました。調査結果は、「携帯電話が使えると安心する」、「携帯電話を使いすぎているという強迫観念の強さ」、「携帯電話に対する感情的な嗜癖(しへき))」などの携帯電話依存の兆候を表しています。
一方で被験者たちは携帯電話の濫用することで、仕事や学業、人間関係への支障や経済的な負担などについて重大な問題を抱えているとは回答していません。


不安症を評価するに当たり、携帯電話に強く依存しているかどうか、携帯電話をかなり濫用しているかどうかという点に着目することは、有意義でしょう。

今後の研究では、携帯電話への依存や濫用が不安障害にどう関係して、どんな悪影響を及ぼすのかを調べることが必要とされます。