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【メディカル】身を焼きつくすほどの激しい恋愛感情は痛みを忘れさせる!ことが科学的に立証

心理脳

Posted on 2010.10.23

rennai「みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ 物をこそ思へ」と百人一首にもあるように、激しい恋心は身を焼き焦がすほどの強い感情であることをわれわれは経験的に知っていますが、米国・スタンフォード大学のSean Mackey准教授らがPLoS ONE 10月13日号に発表した研究で、激しい情熱的な恋愛感情には、鎮痛薬やコカインと同等の鎮痛作用があることが明らかになりました。
准教授らは恋に落ちて9か月以内の、未だ最初の情熱的な恋愛段階にあるスタンフォード大学の学部生15人(男性7名女性8名)を被験者として実験を行い、脳の機能を分析しました。被験者たちは現在の恋人の写真と、恋人ではない知人で恋人と同じくらい魅力的だと思われる異性の写真を用意し、それぞれの写真を見ながら同時に手のひらに熱で痛みを感じさせる装置を付けさせられて、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって脳の働きを観察されました。また被験者たちは先行研究で痛みを緩和する作用が認められている痛みから注意をそらすためのクイズ課題を与えられ、同じ設定でその際の脳の働きも観察されました。
実験の結果、魅力的な異性の知り合いの写真に集中する方法よりも、恋人の写真とクイズ課題により鎮痛効果があることが立証されましたが、その鎮痛作用がまったく別な脳の経路で生じていることが明らかになりました。クイズ課題による効果は認知機能によるもので、大脳皮質レベルで生じていましたが、恋人の写真による鎮痛効果はより原始的な脳の機能である側坐核や扁桃体などの報酬系が活発に活動することで生じていました。これはコカインなどによって生じる働きや、思いがけない巨額の金銭を手にして興奮したときに見られる反応と同様だということです。
准教授は実験結果から、薬物がなくても同様の脳の働きによって鎮痛効果をもたらすことが可能であることが立証できたとしています。