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同性愛嫌悪は自己の潜在的な同性愛指向への恐怖がもたらす!?

心理性と生殖

Posted on 2012.4.25



米国・ロチェスター大学のRichard Ryan教授らがJournal of Personality and Social Psychology 2012年4月号に発表した研究で、同性愛嫌悪は権威主義的な養育と自己の性的指向に対する自覚の欠如による影響が強いことが明ら かになりました。

教授らはいくつかの実験を行い、同性愛に対する意識と養育スタイル、および本人の潜在的、顕在性的指向の関係を調べまし た。第1の実験ではPCを使用して、顕在的な性的指向を確認してある被験者に「me自分」[others他人]という文字を、サブリミナル(潜在意識に影 響する見たと意識できない僅かな時間の0.035秒)で画面上に瞬間的に見せた後で、ゲイ、ストレート、ホモセクシュアル、の文字、ゲイカップルと異性愛 カップルの写真を見てそれぞれ、ゲイか異性愛かを素早く仕分けする課題をさせました。

「me」のサブリミナル提示の後で「ゲイ」への反応速度がより早くな り、「ストレート」への反応速度はより遅くなるのが潜在的なゲイ指向を示す数値として用いられ、顕在的な性的指向と潜在的な性的指向の乖離の指標とされま した。第2の実験では被験者は同性の写真と異性の写真を自由にブラウズし、どちらを長時間見ていたかが測定され、これも潜在的性的指向の指標とされまし た。
また被験者は、また性的指向以外に養育歴について質問され、両親の養育スタイル、権威主義的で自律性を認めないタイプなのか、民主的で 自立を促すタイプなのかなど、父子関係、母子関係についても調べられました。さらに同性愛嫌悪のレベルに関しても顕在的意識でと潜在的意識で調べられまし た。この調査では「ゲイ」とサブリミナル提示された後に、例えば"ki__"の空白を埋めるタイプの単語テストを行い、潜在的な敵意が測定されました。

こ れらの実験と調査の結果、支持的で受容的な養育を受けた人は、自己の潜在的な性的指向へと顕在指向の一致度が高く、権威主義的な養育を受けた人はより一致 度が低く、顕在・潜在の性的指向が乖離していることが多いことがわかりました。またこの顕在的と潜在的性指向の乖離が大きい人、つまり自己への気づきが低 く、潜在的な同性愛指向を持っている人は、ゲイへの敵意、ゲイ嫌悪、ホモセックスへの厳罰化、など同性愛嫌悪傾向が強いことも明らかになりました。

教授らは同性愛嫌悪は悲劇的な事件に繋がることもあり、自分自身を知ることができるようになるために、受容的な養育が重要であるとしています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子

Journal of Personality and Social Psychology 2012年4月号