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オークションのスリルを高めているものは何か?

心理

Posted on 2013.1.8


 
 

オークションや競りは周囲で見ていてもハラハラ・ドキドキするものです。以前 はプロの世界のものでしたが、ネット・オークションが普及してからは、一般消費者にも身近になってきました。ヒトはなぜ、オークションが好きなのでしょう か? そこにはどうも損得よりも、喜怒哀楽という感情の動きや時間へのプレッシャーが関係しているようです。
経済学的には、商取引は本来理性的な判断に基づいて、合理的な価格が決定され ると考えられていますが、ある種のオークションの場合、その価格が参加者を取り巻く状況と、参加者が感じる感情的なプレッシャーの影響で価格が決定される 傾向があることが、ドイツ・カールスルーエ工科大学のMarc Adam博士らがInternational Journal ofElectronic Commerce 2012.13冬号に発表した研究で実験的に明らかになりました。

博士らはネット・オークションの普及の背景には、消費者がオークションに単なる購買行動以上の魅力を感じているからではないかと考え、90人ほどの被験者を対照に、模擬オークションを行う実験を実施し、その反応を分析しました。

実験で使用されたオークション方式は、ダッチ・オークションという生花の競り で、使用される徐々に値が下がっていく方式(バナナの叩き売りと同様のスタイル)で、入札は一回のみ、もっと安くなると粘っていると先に値入したものに、 競り落とされてしまうスタイルで、値を上げていく方式よりもオークションが短時間で終了するメリットがある、というものでした。

模擬オークションに参加している際の心理状態、興奮状態を測定する目的で、被験者の心拍数と皮膚電気反応が測定されました。

実験は値段を下げるスピードを変えて複数回実施され、各回のデータを分析した 結果、下がるスピードが速いほど、参加者は興奮し、またより大きなスリルを味わうために、より長い時間(先に延ばせば延ばすほど誰かに落札されるリスクが 高まるので)オークションに参加していました。

また競り落としたときよりも、競り負けたときの方がより大きな心理反応があり、経験としての印象が強いこともわかりました。

博士らはこの結果から、ネット・オークションも欲しい物を買うためだけではなく、今回の実験からわかったように、喜怒哀楽を伴う娯楽性を消費者に提供することによって普及しているのではないかとしています。

InternationalJournal of Electronic Commerce 2012.13冬号


ちなみに、幸せホルモンと言われるセロトニンは、感情が動いたときに分泌が高まるそうです。時間のプレッシャーを感じたり、競り負けた軽い怒りや悔しさと、次でまた頑張ろうという喜びや楽しみなど、感情の動きが伴うオークションは、セロトニンの分泌を高めているから、楽しいのかもしれませんね。