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危険を嗅ぎ分ける~PTSDとニオイの関係

心理

Posted on 2013.12.14

ディーゼル車の排ガスを嗅ぐと戦地での惨状を思い出してしまう…これは米国の帰還兵に見られるPTSD(心的外傷性ストレス障害)のひとつですが、 PTSDや不安障害の人が恐怖や不安を呼び起こすニオイに敏感になる脳のメカニズムが米国ルトガー大学の研究者らによって解明され、2013年12 月13日の科学雑誌『Science』に掲載されました。この研究は、電気ショックとともにあるニオイを嗅がされたネズミの 脳では、その後、そのニオイを嗅ぐと、実際のニオイの4倍も強く、鼻(嗅覚神経)から脳(脳の嗅球)へ神経伝達物質が放出されているということです。この研究か ら、恐怖と匂いの刺激が、通常よりも敏感で速い神経伝達を起こし、それが恐怖の記憶となって残り、ニオイを嗅ぐたびに起こるために、PTSDや不安障害を起こすことがわかり、今後は、この研究成果を治療に役立て ることができると述べています。
ScienceVol. 342 no. 6164 pp. 1389-1392 DOI: 10.1126/science.1244916