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見知らぬ人に親切にしてもらった経験が共感的な脳の働きを高める

心理

Posted on 2016.1.2

phm23_0002-s スイスのチューリッヒ大学の研究によると、見知らぬ人から親切にしてもらった経験がほんの少しでもある人は、その人自身も見知らぬ人へのやさしさや共感が芽生えて、親切な行動をとるように脳の神経細胞が働くようになることが明らかになり、2015年12月の『Proceedings of the National Academy of the United States of America』で発表されました。
この研究では、被験者に軽い手の痛みの刺激を与えてから、自分の知っている人と全く知らない人が、それぞれ自分が受けたものと同じ痛みの刺激を受けている所を目撃したときの脳の働きを観察しました。被験者の中で「過去に知らない人に親切にしてもらった経験」がある人は、そういった経験がない人に比べて、全く知らない人が痛みの刺激を受けているときに、同情的・共感的な神経細胞の働きが高まっていることが明らかになりました。
人は、自分が親切にしてもらった経験が少しでもあれば、今度は自分が困っている人を助けて自分が受けた恩を返そうという気持ちが高まり、それが実際に脳の神経細胞の動きで確認できたということです。
異国間での諍いや紛争をなくすためにも、見知らぬ人への小さな親切が、大いに役立っている可能性があるということです。
もし逆に、見知らぬ人から不親切にされた場合は、大きな心の溝になり、「見知らぬ人を見たら泥棒と思え」という、強い警戒心と心の壁を作ってしまうのかもしれません。
Hein, G., Engelmann, J.B., Vollberg, M., & Tobler, P.N. How learning shapes the empathic brain. Proceedings of the National Academy of the United States of America, December 2015