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腕立て伏せと腹筋でがん死・早発死を予防できる

運動

Posted on 2017.11.4

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オーストラリア・シドニー大学のなどの研究によると、腕立て伏せと腹筋を行うことで、がん死や早発死のリスクを軽減できることが明らかになり、2017年10月31日発行の『American Journal of Epidemiology』に掲載されました。
この研究は、シドニー大学が中心となり、約8万人のデータを分析したもの。WHO(世界保健機構)では、成人に対して週に2回の筋肉強化運動と、週に150分の有酸素運動を推奨していますが、「オーストラリア全国栄養及び身体活動調査」の結果によると、約85%のオーストラリア国民が、この推奨基準を満たしていませんでした。
一般的に、筋肉強化運動といえば、「スポーツジムに行って機械を使ってウエイトトレーニングなどを行うこと」をイメージするために、一般の人にとっては、費用の問題やスポーツジムに行く時間を捻出することの難しさなどが障害になり、十分な運動ができていないことが推察されます。
そこでシドニー大学の研究者らは、「英国健康調査(HSE)」と「スコットランド保健調査(SHS)」のデータを用いて、SPE(ジムベースおよび自体重量活動)の実施状況と、がん、および心臓血管疾患の死亡率との間の関連性を調べました。研究はコアサンプル数が、30歳以上の成人80,306人で構成され、そのうち死亡者5,763人の死因と、「筋肉強化運動」への取り組み状況を分析しました。
その結果、筋肉強化運動のみを行った場合、
全死因死亡率が23%減少し、がん死亡率が31%減少していることが明らかになりました。一方で、心血管疾患による死亡リスクとは関連性がありませんでした。
また有酸素運動のみを週に150分以上行った場合は、全死因死亡率が16%低下し、心血管疾患による死亡リスクが22%低下していましたが、がん死のリスクに関しては関連性がありませんでした。
筋肉強化運動と有酸素運動を、両方ともに行った場合は、全死因死亡率が20%低下、がん死亡率が30%低下していました。
さらにこの研究では、
特定の装置なしで自重(自分の体重)を使って行うエクササイズも、ジムベースのトレーニングと同じくらい効果的であることが示されています。

結論としてシドニー大学の研究者は、継続的に筋肉強化運動を行うことが疾患予防と健康寿命の延伸につながり、その方法としては、スポーツジムに行ったり、器具を使うウエイトトレーニングなどではなく、腕立て伏せや腹筋など、自宅や公園などで手軽にできる運動でも十分な効果が得られると述べています。

Emmanuel Stamatakis, I-Min Lee, Jason Bennie, Jonathan Freeston, Mark Hamer, Gary O'Donovan, Ding Ding, Adrian Bauman, Yorgi Mavros. Does strength promoting exercise confer unique health benefits? A pooled analysis of eleven population cohorts with all-cause, cancer, and cardiovascular mortality endpoints. American Journal of Epidemiology, 2017