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【メディカル】顔には見覚えがあるのに名前が思い出せない・・・記憶のメカニズムが解明された!

Posted on 2011.8.9

kao通りやパーティなどで偶然見知った顔の人に出会い、相手から親しげに話しかけられても、名前が思い出せない、困ったなと思いながら会話しているうちに相手と接触した場所や時期に関係する話題がきっかけとなり、記憶がよみがえって名前が思い出せたりすることがあります。
英国・ブリストル大学のGareth Barker博士らが、Journal of Neuroscience 2011年7月20日号に発表した研究で、上記のような事態が生じる背景にある記憶メカニズムが明らかになりました。
博士らはこれまでの記憶の脳神経プロセスの研究で、①嗅周囲皮質が、ある対象(例えばある人の顔)が見知ったものか、初めてのものかを判断する能力を担い、 ②海馬が、記憶する対象を認知した場所と検索に重要な機能を持ち、③内側前頭前皮質が、認知と記憶などを統合する、より高次の機能を受け持つ、という3つ の領域が重要であることは知られてはいるものの、それぞれの領域が記憶に関して独立に機能しているのか、相互の関係が重要なのか明確ではなかったことか ら、ラットを使った実験で詳しく分析しました。
実験の結果、海馬と嗅周囲皮質もしくは内側前頭前皮質が連携することで「対象を認知した場所 (どこで見た顔か、鍵をどこに置いたかなど)」と「対象を認知した時間的な順序(いつ見た顔か、最後に鍵を使ったのはいつだったか)」の記憶が形成され、 もし3つの領域間でその連携が上手く取れずに繋がらない場合、認知対象をどこで、いつ、記憶したのか思い出す能力が妨げられることがわかりました。
博士らはこの記憶のためには、3つの領域が同時に一緒に働かなくてはならない、という研究結果は、アルツハイマー病のような記憶障害の治療に重要な意味を持つとしています。