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激しい運動で脳も疲れ果てるメカニズムが明らかに!

Posted on 2013.4.15

phm06_0577-s箱根駅伝、マラソンやクロスカントリー・スキー、トライアスロンなど長時間・長距離のレースを戦い抜いたアスリートがゴールラインで精根尽き果て倒れ、抱きかかえられるようにゴール前から移動させられる姿をしばしば目にします。
一般に我々はこうした現象は筋肉を動かすエネルギーが消耗して生じていると考えがちですが、そればかりではなく骨格筋などを動かす司令塔である脳の中枢神経 システム自体も疲れ果ててしまった結果でもありますが、その中枢性疲労のメカニズムがデンマーク・コペンハーゲン大学のJean-François Perrier博士らが、PNAS 2013年3月19日号に発表した研究で明らかになりました。
博士らは以前から知られている運動によって生じる中枢性疲労のメカニズムを調べるために、カメの脊髄を取り出し、運動と疲労による神経伝達物質のメカニズムを調べました。
詳しく分析した結果、セロトニンが過剰になることが脳の運動抑制メカニズムが働きだす引き金になっていることが明らかになりました。
セ ロトニンは運動することで分泌され、一定限度までは身体活動を継続する助けとなっていますが、肉体の限界を超えるほどまで身体活動が行き過ぎると、セロトニンが過剰となり、ブレーキの役目を果たすというパラドキシカルなメカニズム、すなわち中枢性疲労の神経メカニズムが今回明らかになったということです。
博士らは今回の研究結果は、抗うつ薬として知られるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の服用により疲労感が増したり、効かなかったりする場合があることの説明となり得るもので、今後より機能する薬剤の開発につながるだろうとしています。
PNAS 2013年3月19日号