コラムColumn

学習能力低下や認知症に関係するMK2 / 3タンパク質

Posted on 2014.9.12

o0640042713061386766年齢を重ねると物覚えが悪くなり、新しい機械の使い方などになかなか慣れません。実はその原因が、脳 の神経細胞間の情報伝達に欠かせない「棘突起」と呼ばれる部分を形成するのに必要なタンパク質の不足や欠損が関係し、もの忘れや認知症の初期症状を起こし ている可能性があるというのです。
これは英国ウォーリック大学の研究によるもので、脳の神経細胞(ニューロン)の情報伝達に欠かせない「MK2 / 3タンパク質」の不足・欠如によって脳神経細胞間の情報伝達がうまくいかずに、もの忘れや、認知症の初期症状が現れている可能性が確認され、「MK2 / 3タンパク質」の不足・欠如を防ぐ薬や治療法の開発が認知症の予防に役立つのではないかと2014年8月の『Nature Communications』に発表されました。
私 たちの脳では、外部の刺激を受けて、神経細胞(ニューロン)が電気信号としてその刺激を別のニューロンに伝えます。電気信号の刺激はニューロンの中で「神経伝達物質」を作り、それを別のニューロンに向かって放出することで、次のニューロ ンに情報が伝達されます。
「MK2 / 3タ ンパク質」は、前に刺激を受けたニューロンが放出した神経伝達物質を受け取る「とげのような突起」を作るために必要なタンパク質で、これが欠損すると、とげ突起が短くなっ てしまったり、数が減ったり、未形成になるために、うまく神経伝達物質の刺激を受けられず、情報を受け取れなくなってしまい、これが記憶力を低下させたり、練習によって何かができるように なったりする妨げになることが判明。
たとえばずっと手で食器を洗っていた老人が、食器洗い機をうまく使いこなせなかったり、食器洗い機を使うことに抵抗を感じたりするのは、「MK2 / 3タンパク質」の不足・欠如によって、新しい記憶形成ができなかったり、学習能力が低下することと関係しているのではないかと研究者は分析し、、「MK2 / 3タンパク質」が今後の認知症治療薬を開発する上での重要なターゲットになるのではないかと指摘しています。
The MK2/3 cascade regulates AMPAR trafficking and cognitive flexibility. Nature Communications, 2014; 5: 4701