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失った手指の記憶を脳は30年以上も保持できる

Posted on 2016.9.3

GG095_L英国オックスフォード大学の研究によると、私たちの脳は、手や指を切断してからも、長期間に渡り、失った指や手の感覚(幻視感覚)を保持し続けていることが明らかになり、2016年8月の『eLife』に掲載されました。
この研究では、25年前、31年前に左手を失った2人の被験者と、右利きで両手を持つ11人について、脳の大脳皮質の中心溝の後ろ側(前頂葉の前側)にある「体性感覚野」(触角、痛覚、圧覚など、体が受けた感覚の刺激に関する情報を処理する場所)の動きを、7テスラ超高磁場MRIシステムで観察し、そのようすを比較しました。
その結果、左手を失って長期間が経過している人の脳においても、両手を持つ人と同じように、失った手の感覚を保持し続けていることが明らかになりました。
この結果について、研究者は、今まで失った手の機能を補うために、脳は新しい情報を習得していくために、古い感覚を失い、新しい情報と入れ替えに、新しい情報を保持するものだと思われていましたが、新しい情報と失った手の幻視感覚を長期間持ち続けることができることが明らかになり、今後のリハビリテーションの方法や、義肢の開発に、この研究成果を役立てたいと述べています。