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睡眠不足で甘い物、脂っこいものが食べたくなるメカニズム

Posted on 2017.1.21

dn054_lストレスは霊長類で最も発達し、脳全体の3分の1を占める「前頭前皮質」に影響を与え、感情や衝動を抑制している前頭前皮質の支配力を弱めることで、不安感が強くなったり、欲望にまかせた暴飲暴食、薬物乱用、お金の浪費など、ふだんは抑え込んでいる感情が抑制できなくなり、人間としての高度な精神機能を奪ってしまうことがさまざまな研究で指摘されています。
2011年の米国エール大学の研究では、標準体重と肥満体重の被験者を、危険でないレベルの低血糖状態にして、食欲の変化、脳の動きについて調べました。その結果、体重に関係なく、低血糖状態になると、高カロリーの食品が食べたくなる欲求が高まり、肥満のある人は特に食欲の衝動を抑制できない状態に陥ってしまうことが明らかになりました。これには、 低血糖で血中のブドウ糖が不足すると、ヒトの脳で食欲をコントロールしている前頭前皮質が活性化されなくなることが関係していました。さらに肥満がある人の脳では、低血糖状態が解消されても、前頭前皮質の働きが活発にならず、食欲を抑制できないことも判明し、2011年の『Journal of Clinical Investigation』で発表されています。
●出典 J.clin.Invest. 2011;121(10):4161–4169. doi:10.1172/JCI57873.
さらに2016年11月の科学雑誌『eLife』に掲載された筑波大学のマウスを用いた研究によると、睡眠不足の状態になると、食欲を抑制する脳の前頭前野の神経活動の不活性化が起こり、糖質や脂質などを多く含む不健康な食べ物への欲求が高まり、過食を引き起こしていることがわかりました。
●出典 eLife DOI: doi.org/10.7554/eLife.20269