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腸内細菌が脳卒中やてんかんを引き起こす?

Posted on 2017.5.24

米国ペンシルベニア大学の研究で、腸内細菌が脳卒中やてんかんの原因となる脳血管の変形や奇形を引き起こす可能性があることを明らかにし、2017年5月の『Nature』で発表しました。
これは、マウスに海綿状血管奇形(CCM)の病変を形成させて、腸内細菌との関連性について研究した結果によるものです。CCMとは、脳血管に小さな粒状のしこりがいくつもできてしまう病気で、ほとんどは自然に小さくなって消滅しますが、大きくなって破けると脳内に血液が漏れて脳卒中やてんかん発作などを起こします。実験では、CCMの病変を悪化させている要因の1つに腸内細菌として人の腸内にも存在する「グラム陰性細菌」があることを特定しました。実際にグラム陰性細菌をマウスの体内から除去すると、CCMを発症したマウスの病変数が大幅に減少することがわかりました。グラム陰性細菌は、細菌自体が死滅しても、その細胞壁に含まれるリポ多糖(LPSなど:グラム陰性菌の外膜の成分であるリポ多糖の一種)が菌内毒素として残り、これが免疫シグナル伝達の強力な活性化因子となって、発熱、炎症、血液凝固作用などを起こすことがわかっています。研究では、マウスにLPSを注射した時にCCMが悪化し、LPSを除去するとCCMの病変が形成されないことも証明しました。研究者らは、ヒトの体内にいる腸内細菌の種類を変えることで、脳卒中やてんかんを引き起こす脳血管の奇形を防ぐことができるかもしれないと述べています。
"Endothelial TLR4 and the microbiome drive cerebral cavernous malformations." Nature 545, 305–310doi:10.1038/nature22075
[caption id="attachment_5554" align="alignleft" width="300"]Gut-brain connection or gut brain axis. Concept art showing a connection from the gut to the brain. 3d illustration. Gut-brain connection or gut brain axis. Concept art showing a connection from the gut to the brain. 3d illustration.[/caption]