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エナジードリンクのあり方を問う欧州の研究報告

エナジードリンクは、1987年にヨーロッパで大流行して以来、世界の若者に大人気のドリンクです。現在世界に約500種類のエナジードリンクがあり、そ の特徴としては、カフェインと砂糖の含有量が多いこと。さらにタウリン、ガラナ、ニンジン、ビタミンなどの興奮作用が期待される成分が含まれているノンア ルコール飲料です。

最近ではエナジードリンクが不整脈や狭心症などの重大な心臓病を引き起こす可能性があることを、2014年8月に開催された欧州心臓病学会でも大々的に報告されています。

科 学雑誌『 Frontiers in Public Health』に掲載されたWHOのヨーロッパ地域事務所の研究者の研究レビューによると、エナジードリンクを飲む18歳~29歳の若者の約70%は、ア ルコールと一緒に混ぜてエナジードリンクを飲んでいることがわかりました。これは非常に危険な行為であることを研究者は付け加えています。

また、カフェインが多く含まれるエナジードリンクを常飲することで、カフェイン中毒になり、高血圧、心臓の動悸、けいれん、吐き気、精神疾患などを引き起こす症例が多数報告されています。

研 究者らは、販売時に年齢制限などがないエナジードリンクのあり方について、規制をする必要性を求め、さらにカフェイン含有量の上限を設定したり、年齢制限 や販売規制などを行うこと、アルコールとの混合による健康に対するダメージを訴求すること、潜在的な健康への悪影響についての学校教育を徹底するべきだと 述べています。

Energy Drink Consumption in Europe: A Review of the Risks, Adverse Health Effects, and Policy Options to Respond. Frontiers in Public Health, 2014

短期の急激なダイエットの方が肥満を改善

ゆっくりダイエットをした方が成功し、リバウンドもしないという定説がありますが、オーストラリア・メルボルン大学の研究がそれをくつがえし、肥満者の場 合、厳しいカロリー制限をして短期間で痩せたほうが、ダイエットに成功しやすく、リバウンドしにくいという研究結果を2014年10月の『 The Lancet Diabetes & Endocrinology』で発表しました。

これはメルボルン市民病院に通院するBMI が30~45の肥満患者204人(男性51人、女性153人)を対象に行った調査結果によるもの。実験では被験者を、1日450キロカロリー~800キロ カロリーという低カロリー食を12週間続ける「急速減量グループ」と、今の摂取カロリーから500キロカロリー減らす食事を36週間続けるという「低速減 量グループ」に分けました。それそれの目標は共に「現在の体重の12.5%減量」に設定しました。

その結果、期間内に目標の減量に成功した人は、「急速減量グループ」では全参加者の81%に達したのに対し、「低速減量グループ」では50%しか成功できませんでした。

さらに3年後の被験者たちのリバウンドのようすを調べてみると、「急速減量グループ」の70.5%、「低速減量グループ」の71.2%がリバウンドしていたことが明らかになりました。

せっかく減量したのに、結局、両グループとも3年後にはリバウンドしてしまったのですね…これが一番の「衝撃的な真実」かも!

こ の結果について研究者らは、最初に極端なカロリー制限をして短期間で痩せたほうが、ブドウ糖の摂取量が減り、「ケトーシス」、つまりブドウ糖の不足を補う ために、体内の脂肪を肝臓で燃焼してエネルギーに換えようと体が働き出すために、体重が減少しやすく、ダイエットに成功するのではないかと分析していま す。

“The effect of rate of weight loss on long-term weight management: a randomised controlled trial.” The Lancet Diabetes & Endocrinology, Early Online Publication, 16 October 2014 doi:10.1016/S2213-8587(14)70200-1

【参考までに…】
ち なみに「ケトーシス」とは、血液中のケトン体の量が多い状態をさします。そしてさらに、「ケトン体」は、脂肪が体内で燃焼されるときの「燃えかす」のよう なもので、脂肪を肝臓で分解するときに作られ、血液中に放出される代謝物質。ケトン体は酸性なので、増えると血液も酸性になり、体調不良や病気の原因にな ります。ケトン体が増えると、腹痛、頭痛、食欲不振、こちの乾き、頻尿、吐き気などの症状が出て、「酸血症」になることがあります。

糖尿病の患者さんは、本来のエネルギー源であるブドウ糖をうまく代謝(利用)できないために、脂肪を燃焼させているため、ケトン体の量が多くなりがちです。

フカヒレを1週間食べ続けるとお肌はプルプルになる?

コラーゲンのことをよくわからないまま、金銭的にも美容的にも痛い経験をしないように、私たちの体の中でコラーゲンがどんな役割をしているのかしっかり確認しましょう。まず、コラーゲンは皮膚だけにあると思っていませんか? 実はコラーゲンって、皮膚、骨、関節、筋肉、内臓、血管、髪などいろいろなところに存在していま す。そして、今までに分かっているコラーゲンのバリエーションは、29種類。例えば、体重53キロの女性なら約3キロのコラーゲンが体の中にあり、さまざ まな種類のコラーゲンが体中で働いているのです。続きはこちらへ。

セクシーな女性を見ると男性の社会性が低下する

国立シンガポール大学と香港中文大学の研究で、セクシーな女性を見ると、男性は非社会的な思考になり、チャリティー募金などへの協力姿勢が低下することが明らかになり、2014年12月の『Jouenal of Consumer Research』で発表されます。

こ れは18歳~24歳の男性を対象に、セクシーな女性の広告を見たときの心理的な状況を調べたもの。その結果、セクシーな女性の広告を見ると、そうでない風 景などの広告を見たときよりも、男性が疲れ、眠気、退屈さなど自分自身の感情に敏感になり、さらに「10ドル欲しい」とほかの学生に言われたとき、より 「あげたくない」と強く感じる傾向があり、絶滅の危機に瀕する動物たちを保護するためのチャリティーTシャツを購入する意欲が低下することが明らかになり ました。

この結果について研究者らは、環境保護の広告や募金広告に水着のセクシーな女性を使うと、募金がうまく集まらず、メッセージも伝わらない可能性があるので、注意すべきだと分析しています。

“The Effects of Heightened Physiological Needs on Perception of Psychological Connectedness.” Journal of Consumer Research: December 2014o0800053513077544986

高タンパク食は高血圧を予防する~豆腐、納豆、枝豆がおススメ

o0640042613076489539タンパク質は筋肉・内臓・皮膚・爪・髪など人の体をつくるために必要な栄養素で、日本人の成人男性だと1日50グラム、女性は1日40グラム程度を摂取する必要があると言われています。米 国ボストン大学医療センターの研究によると、平均で1日約100グラムのタンパク質を摂取している人は、タンパク質を摂取する量が低いグループに比べて、 高血圧になるリスクが約40%も低いことが明らかになり、2014年9月の『American Journal of Hypertension』で発表されました。
この研究は、Framingham Offspring Studyという11年間に渡って高血圧に関して調査を行ったデータを分析したもの。その結果、タンパク質(動物性・植物性)を多く摂取している人は、摂 取量が少ない人より高血圧になりにくく、この傾向はBMI25以上でも以下でも同じ、つまり肥満の人であっても、タンパク質を多く摂取する人の方が高血圧 になりにくいことが明らかになりました。さらに、タンパク質だけでなく、食物繊維も摂取量が多い人は、少ない人に比べて、40~60%も高血圧になるリス クがさらに低いことも明らかになりました。
この結果について研究者らは、詳しいメカニズムの解明はまだできていないものの、タンパク質を多く摂取することによって、血管の健康が保たれているために、高血圧を予防するのではないかと推察しています。
タ ンパク質の過剰摂取はカロリーが高くなり肥満を引き起こす可能性もあるので注意が必要ですが、やはり体をつくるもとになるタンパク質はとても大切な存在の ようです。特にタンパク質と食物繊維の組み合わせが健康に良いようなので、日本人の場合、その両方を豊富に含む豆腐、納豆、枝豆などがお手軽な植物性タン パク質源になりそうです。

●タンパク質には動物性と植物性があります。
動物性タンパク質…肉類・魚介類・卵・乳製品など。
植物性タンパク質…豆類・穀類など。

腸内細菌がヒトの食事の好みまで変えてしまう

腸内細菌の働きが注目されていますが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究によると、腸内細菌がヒトの食事の好みまで変えてしまう可能性があることを2014年8月号の『Bio Essay』で発表しました。

昔から、海苔や海藻を好んで食べる日本人だけに、海藻類を分解してエネルギーに換える消化酵素を腸内細菌が作り出すことは知られていました。

今 回の研究では、脂っこい食事や甘いお菓子などを食べ続けていると、腸内細菌の構成が変化し、脂っこいものや甘いものを分解しやすい状態になってしまい、さ らに腸内細菌が、もっとたくさんの脂っこい食事や甘い食べ物を食べるように、腸管にある迷走神経にシグナルを出して、そのシグナルが神経系を介して、脳に 到達し、宿主であるヒトに対して、もっと甘くて脂っこい食事が食べたくなるようにコントロールしている可能性があると指摘しています。

研 究者らは、このような腸内細菌の働きが影響して、食習慣を見直すのが難しくなったり、悪いものを食べないように好みを変えるのを難しくしているのではない かと指摘した上で、例えばさっぱりした低カロリーの食事を好む人の腸内細菌に入れ替えることで、食習慣の改善も容易になるかもしれないと述べています。

Is eating behavior manipulated by the gastrointestinal microbiota? Evolutionary pressures and potential mechanisms. BioEssays, 2014o0800040013044941087

This image illustrates the relationship between gut bacteria and unhealthy eating. Credit: Courtesy of UC San Francisco

犬を飼うと10歳若返り、うつ病も予防する!~高齢者の場合

phm12_0990-s英国セントアンドリュース大学の研究によると、犬を飼うことで高齢者の健康状態が良くなり、身体活動レベルも10歳も若返ることが明らかになり、2014年9月号の『Preventive Medicine』で発表されました。

この研究は平均年齢79歳の547人の高齢者を対象に行ったもので、健康状態、身体活動レベル、生活習慣などを調査しました。

その結果、犬を飼っている高齢者は、飼っていない高齢者に比べて、身体活動レベルが約10歳も若く、さらに、不安症やうつ病などの症状も明らかに少ないことがわかりました。

“Dog ownership and physical activity in later life: A cross-sectional observational study.”  Preventive Medicine, Volume 66, September 2014

同じ政治姿勢の体臭はイイ香り

af0100020611政治姿勢が異なる人とは、時に口論になったり、ケンカをしてぶつかり合うものですが、同じ政治姿勢の人とは不思議とケンカにはならず、一緒にいても、気持 ちが通じ合って楽しいものです。実はその原因に、なんと「体臭」が関係しているかもしれないという、おもしろい研究を紹介しましょう。

保 守派VS強硬派、タカ派VSハト派、右派VS左派など、政治に対する考え方、姿勢が異なる人の体臭は「悪臭」と感じ、政治的傾向が似ている人の体臭は「良 い臭い」と感じることが、米国ブラウン大学、ハーバード大学、ペンシルベニア州立大学の研究で明らかになり、2014年9月2日のオンライン版 『American Journal of Political Science』に掲載されました。

この研究は、146人の参加者に、自分自身の政治的姿勢に関するアンケートに答えてもらい、その後、保守的姿勢が強い第三者の体臭と、強硬的な姿勢の強い第三者の体臭を嗅いでもらい、それぞれの体臭に対する感想を記録しました。

第三者と被験者は一度も面識がなく、被験者には調査の意図などについては説明をしていない状態でデータを集めました。

その結果、保守的な姿勢の被験者は、保守的な第三者の体臭を好み、強硬的な姿勢の被験者は、強硬的な第三者の体臭を好むことが明らかになりました。

こ の結果について研究者らは、香り(体臭)の情報は、私たちが自分では気がつかない、潜在的な興味や関心を反映する政治的なイデオロギーに関して、自分が長 期的には強硬派の姿勢の方が合うのか、保守派の姿勢の方が合うのかを判断するための材料として伝達されているのではないかと分析しています。

Assortative Mating on Ideology Could Operate Through Olfactory Cues. American Journal of Political Science, 2014

劣等感で太る!

phm11_0074-s英国ロンドン大学の研究で、太っていることで、差別されたと強く感じている人ほど、太りやすいことが明らかになり、2014年9月号の『Obesity』に発表されました。

これは、イギリス人の50歳以上の成人2944人を対象に4年間に渡り行った研究で、被験者が日ごろ、体重差別、肥満だということで嫌な思いをしているかどうかをチェックする5つの質問に回答してもらいました。質問は、以下の5つです。

①あなたはほかの人よりも尊敬的な態度や、礼儀正しい態度で接してもらえていないと思う。②あなたはレストランで他の人よりも冷遇されているような気がする。
③まわりの人があなたに「あまり利口じゃない」というような態度で接している。
④あなたは脅されたり、嫌がらせを受けている。
⑤あなたは医師や病院スタッフから冷たい扱いをされたり、良いサービスを受けさせてもらえていないと思う。

その結果、最も肥満差別を受けていると感じている人は、感じていない人に比べて、1.66キロも体重が増えていたそうです。

こ の結果を受けて研究者らは、食事指導だけでなく、肥満者が抱いている劣等感や、恥の意識、社会に対する恨みなどを抱くことが、実は体重が減らず、効果的な ダイエットにはマイナスであることを、きちんと教えてそのような感情を抱かないようにアドバイスする必要があると述べています。

“‘Fat shaming’ doesn’t encourage weight loss.” Obesity, 11 September,2014

アバター、ロボット、人形などが生きているように感じたらあなたは孤独なのかも

phm23_0559-sアバター、ロボット、人形などが生きている人間のように感じられたり、ペットが人間のように思えてしまったとき、あなたは社会的に孤立して、孤独感を感じているのかもしれません。

こ れは米国ダ―トーマス大学の研究によるもので、2014年9月の『Psychological Science』に掲載された研究結果。研究は、30人の大学生を対象に行われ、モーフィングというCGを用いて、人の顔から徐々に人の顔に見えないよう に画像処理をしたものを30人の学生に見せて、どの段階で人間の顔に見えたかを判断してもらいました。被験者には、社会的な孤立感に関する質問や自分がど の程度、ほかの人に受け入れられているかを判断するアンケートも実施されました。

その結果、「自分は社会的に孤立している」と感じている 学生は、より人間の顔に見えない、かけ離れた段階の写真でも、その写真が人間であると判断してしまう傾向が見られ、逆に「自分は社会に受け入れられてい る」と感じている学生は、より人間の顔に近い画像にならないと人間であると判断しませんでした。

この結果について研究者らは、人間関係に 悩む人や社会にうまく適応できない人を見分けるために、このような調査が有効であり、たとええ社会的に孤立していると感じている人でさえも、人間として、 誰かとつながり、理解してもらいたい、孤独から脱出したいという欲求があるからこそ、人間の顔とかけ離れた画像であっても、人間だと判断して、孤独を癒そ うとするのではないかと述べています。

Social Connection Modulates Perceptions of Animacy. Psychological Science, 2014