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ラットもエサより優先して困っている仲間を助ける共感力を持つ

smo023-s仲間を助け合う行動は、霊長類に特有のものと言われてきましたが、ラットも溺れそうな仲間を助けようとする行動をとることが、関西学院大学の研究で明らかになり、2015年5月12日のドイツの科学ジャーナル『Anamal Congnition』に掲載されました。

関 西学院大学文学部総合心理学科の佐藤暢哉教授(神経科学)らが行った研究では、溺れそうになっている危険にさらされたラットを、隣に安全な状態でいるラッ トが、ゲージの扉を開いて助けることができるような装置を準備。実験を行うと、溺れそうになっているラットを隣のラットが認知して、素早くゲージのドアを 開いて、溺れそうなラットを助けたそうです。さらに、ラットを助ける扉のほかに、エサがもらえる扉も設置して、溺れているラットを見せたところ、まず隣の 溺れそうなラットを救出してから、エサの扉を開いたそうです。

この研究結果から、ラットも「共感」をして、同種の他個体に対して、向社会的な行動をとることが確認され、世界的な注目を浴びています。

http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10071-015-0872-2

逆に、ラットにもあるらしい向社会的な「共感」は、何が原因で喪失されてしまうのかが、気になりました。

30分の睡眠不足が肥満と糖尿病リスクを高める

phm12_0203-s睡眠不足は健康を害する原因の1つですが、平日に30 分、睡眠時間が短くなることで、肥満のリスクが17%、2型糖尿病を発症するリスクが39%も増加することが、カタールのワイコーネル医科大学の研究で明 らかになり、2015年3月にカリフォルニアで開催された米国内分泌学会の年次総会で発表されました。

これは、2型糖尿病と診断されたばかりの男女522人を対象に、①食事と運動指導を行うグループ、②運動指導を行ったグループ、③通常の診療のみを行ったグループ、という3つのグループに分けて、睡眠日記、空腹時の血液サンプルの分析、ウエスト周囲径などを分析しました。

その結果、平日、睡眠不足に陥っている人の72%が肥満であること、平日の睡眠不足が血糖値を上昇させて、糖尿病を悪化させている可能性が高いことなどが判明しました。

Taheri S. “The Impact of Sleep Debt on Adiposity and Insulin Sensitivity in Patients with Early Diabetes” [Abstract LBT 112].  Presentation at ENDO 2015 (Annual Meeting of the Endocrine Society), 5 March 2015.

1時間に2分だけ体を動かすと死亡リスクが33%も低下する

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週に1回ジムで筋トレ、ランニング…などというと、かなりハードルが高くなって「私には ムリ…」と運動から足が遠のいてしまう人に吉報です。1時間にたった2分間だけ歩く、掃除をするなどして体を動かすだけで、死亡リスクが33%も低下し、 健康力がアップすることが、米国ユタ大学の研究で明らかになり、2015年4月30日付の米国腎臓病学会の学術誌『Clinical Journal of the American Society of Nephrology (CJASN)』に掲載されました。

こ れは米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを分析したもので、1時間座りっぱなしの後に、立ち上がるだけでは健康効果は見られなかったものの、 「歩く」、「ガーデニングをする」、「部屋の掃除」などの軽い強度の運動を2分間行うだけで、心臓病などのリスクを低下し、死亡リスクを33%も低下する ことができるそうです。

これなら簡単に実行できそうですね!
みなさん、座りっぱなしにならないように、1時間に1回は、重たい腰を上げて、短時間でも歩いて体を動かしましょう。

Light-Intensity Physical Activities and Mortality in the United States General Population and CKD Subpopulation. CJASN, April 30, 2015

100歳長寿の多いエリアで長寿研究スタート

P1090089100歳長寿の多いエリアで長寿研究スタート~丹後活き生き長寿研究

人口10 万人あたりの100 歳以上の高齢者の数は全国平均で約46 人。しかし日本海に面し京都北部にある丹後地域(京丹後市・宮津市・伊根町・与謝野町)は、全国平均の2 倍以上の約114 人(平成26年9月現在)という長寿者が生活しています。つまり丹後地区は全国的に見ても、長寿者が多いエリアということになります。

100 歳長寿には、①大病の経験がない、②筋肉が比較的強いなどの特徴があるそうです。これに着目した京都府立医科大学附属北部医療センター中川正法病院長(前京都府立医科大学神経内科教授)らは、丹後地域に住む高齢者の食生活や体力を10 年間調査し、健康長寿に貢献するために「丹後活き生き長寿研究」に取り組んでいます。

対象となるのは丹後地域に在住の60 ~ 64 歳の男女約3,600 人で、本格的な調査は、平成27年5 月からスタートします。すでに一部地域で70人程度の先行調査が開始されており、調査を通じて長寿の秘訣(食事・運動・生活習慣の特徴)が明らかになることが期待されます 。

 

心臓病リスクを半減する食事とは?

phm19_0695-s  ギリシャのハロコピオ大学の研究によると、新鮮な果物や野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ類、魚、オリーブオイル、そして適量の赤ワイン(グラス1~2杯)を中心とした「地中海ダイエット(地中海式の食事)」が、心臓病リスクを47%も低下させることが明らかになり、2015年3月のAmerican College of Cardiology 第64回の学術集会で報告されました。

この研究は18歳~89歳までの2500人のギリシャ人男女を2001年~2012年まで調査し、5年後、10年後の、健康診断の結果や食生活、運動習慣などの質問調査の結果を分析したもの。調査期間中に男性の約20%、女性の約12%が心臓病にかかるか、心臓病で亡くなっていました。

そして先に上げた地中海式の食事を続けていた人は、そうでない人に比べて47%も心臓病の発症リスクが低く、さらに地中海式の食事の傾向が1ポイント上がると、心臓病にかかるリスクが3%も低下することがわかりました。

この結果について研究者は、地中海式の食事が、糖尿病、高血圧、炎症を予防することで、心臓病の発症リスクを低下させているのではないかと分析しています。

“Adherence to Mediterranean is the Most Important Protector Against the Development of Fatal and Non-Fatal Cardiovascular Event: 10-Year Follow-up (2002-12) Of the Attica Study,”

American College of Cardiology’s 64th Annual Scientific Session in San Diego –
See more at: http://www.acc.org/about-acc/press-releases/2015/03/04/16/36/mediterranean-diet-cuts-heart-disease-risk-by-nearly-half#sthash.GCuQ9sCF.dpuf

 

 

アップルのロゴを正しく描けたのは85人中たった1人!!

appleiPhoneにiPad、PCに時計、いろいろなところで目にする、世界一有名と言っても過言ではないアップルのロゴですが、UCLAの大学生85人に、記憶をたどって紙に描かせたところ、正確に描けた学生はたった1人だったそう。

企業のロゴは、親しみやすくシンプルで、ひと目で記憶に残るようなデザインの工夫がありますが、人間の脳は、ロゴに対して大まかに記憶するのみで、細かい部分を正確に記憶していないことが明らかになり、2015年3月の科学雑誌『The Quarterly Journal of Experimental Psychology』で発表されました。

ちなみに、ロゴ想起の正確さに関して、MACユーザーと非ユーザーに、差はなかったそうです。それにしても、胃??は傑作ですね!

Adam B. Blake, Meenely Nazarian, Alan D. Castel. The Apple of the mind’s eye: Everyday attention, metamemory, and reconstructive memory for the Apple logo. The Quarterly Journal of Experimental Psychology, 2015

Credit: Adam Blake, Meenely Nazarian, Alan Castel/UCLA Psychology
Copyright © 2015 The Experimental Psychology Society

DNAのメチル化と寿命

csne001-s英国エジンバラ大学の研究で、新たな寿命を予測する方法として、血液を採取して解析し、DNAのメチル化解析を行うことが有効であることがわかり、2015年1月の『Genome Biology』で発表されました。

こ の研究は、高齢者約5000人を最大で14年間、血液サンプルの採取や生活習慣に関する追跡調査を行った4つの研究結果を分析したもの。その結果、DNA のメチル化が加速的に増加する傾向になる高齢者は、そうでない高齢者に比べて、近い将来の死亡リスクが高いことが明らかになりました。

DNA のメチル化とは、DNAを形成する4つの塩基(アデニン、シトシン、チミン、グアニン)の中のシトシンについている水素(H)が、メチル基(CH3)に変 わることをを言いますが、これがDNAにどんな変化をもたらすかというと、「DNAがメチル化すると、遺伝子の働きが制御されてしまう」のです。

DNAのメチル化によって、がんの遺伝子が暴れないように制御することもできるのです。がん細胞のDNAを調べてみると、メチル化の異常が発見され、がん抑制遺伝子が働かなくなって、がんが発生してしまうことが明らかになっています。

今 回の研究結果は、高齢になってからDNAのメチル化が加速すると近い将来の死亡リスクが高まるということですが、これはメチル化によって遺伝子の働きが悪 くなり、がん抑制遺伝子や、さまざまな病気の発生を抑制する遺伝子の働きを悪くしてしまうことで、がんや病気になり、寿命が短くなってしまうというプロセ スを作り出しているのではないかと考えられます。

“DNA methylation age of blood predicts all-cause mortality in later life.”  Genome Biology 2015, 16:25, 30 January 2015.

瞑想には脳の加齢老化を遅らせる可能性がある

phm07_0741-sカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究で、長期的に瞑想を行うことで、加齢に伴う脳の灰白質の委縮を抑制する効果があることがわかり、2015年1月のオンライン版『Frontiers in Psychology』で発表されました。

こ の研究は習慣的に瞑想を行っている50人と、瞑想を行っていない50人の、脳のMRI画像を比較したもので、瞑想を習慣的・長期的に継続している人は、瞑 想をしない人に比べて、脳の灰白質の加齢に伴う萎縮が少ないことが明らかになりました。灰白質は注意力、感情、記憶、判断力など、脳の働きの中心となる部 分で、たくさんの神経細胞が存在しています。

瞑想を習慣的に行っている被験者50人は、男性28人、女性22人で、年齢は24歳から77歳。瞑想歴は4年~46年で、平均20年、瞑想を行っているそうです。

研究者らは、瞑想と灰白質維持の直接的な因果関係については、ライフスタイルの選択や遺伝的な影響、成育歴や職歴などが複雑に関係しているために、解明が難しいとしながらも、瞑想には、脳の老化を遅らせる可能性があることを指摘しています。

“Forever Young(er): potential age-defying effects of long-term meditation on gray matter atrophy.”  Front Psychol. 2015 Jan 21;5:1551.

クラッシック音楽が脳の機能を良い状態にする可能性あり

AL-NANASI14世界中で毎日、さまざまな音楽が生まれ、CDが発売され、街角やコンサートで演奏され、人々はそれを喜んで聴きに行きます。このように音楽を聴くのが好きな人は多いですね。それはなぜでしょか?特にクラッシック音楽は時代や国境を超えてファンの多い音楽です。ヘルシンキ大学の研究によると、クラッシック音楽を聴くことで、ドーパミンの分泌と輸送が活性化され、脳細胞の神経伝達や学習や記憶に関与する遺伝子の活性を増強し、特にαシヌクレイン(SNCA)というパーキンソン病の発症に関係している遺伝子が過剰に活性を高めて、神経変性を起こさないように抑制する働きがあることが、2015年3月12日のオンラン版の『Peer J』で紹介されました。この研究で使用されたのは、モーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216』だったそう。たしかに心地良い曲で、頭もスッキリしますね。つまりクラッシック音楽は、脳の健康や機能を維持するためにプラスの効果をもたらしてくれるので、私たちは無意識のうちにそれを聞きたがるのかもしれませんね。

The effect of listening to music on human transcriptome. PeerJ 3:e830

がんにならないために重要な2つの生活習慣

t02200147_0800053313213396631ニューヨーク大学の研究で、アルコールを飲みすぎないことと、野菜と果物を食べることが、がんにならないための生活習慣として重要であることがわかりました。これは、2983人のフラミンガム心臓研究という米国で1948年から続けられている調査に参加した男女のデータを分析した結果によるものだそうです。それによると、肥満が関係しているとみられる乳がん、前立腺がん、大腸がんなどは、アルコールの摂り過ぎに注意して、野菜と果物をたくさん食べる食生活に切り替えることで、予防できるということです。
“Concordance with World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research (WCRF/AICR) guidelines for cancer prevention and obesity-related cancer risk in the Framingham Offspring cohort (1991–2008).”  Cancer Causes & Control, 6 Jan. 2015.