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母が高齢の方が子どもの成績が良く高身長

phm20_0634-sほとんどの先行研究では、母親の年齢が高いと、出産時のリスクが高まることが指摘されていますが、ドイツのマックスプランク研究所の調査によると、母親の年齢が高いほうが、子どもが高身長で成績がいいことが明らかになり、2016年4月の『Population and Development Review』に掲載されました。

この研究では、1960年~1991年にスウェーデンで生まれた子ども約150万人の母親の年齢とその後の成育歴(身長、体力、学校での成績)の関係について調べました。その結果、母親が40歳以上の時に生まれた子どもの方が、身長が高く、学校の成績もよかったということです。

結果について研究者らは、高齢出産は妊娠後期と出生時にリスクが高いことは周知されているが、その後の子育ての成果についての比較がなく、高齢の母による子育ての成果について引き続き調査を行う必要があるとしています。

Kieron Barclay, Mikko Myrskyl�. Advanced Maternal Age and Offspring Outcomes: Reproductive Aging and Counterbalancing Period Trends. Population and Development Review, 2016

果糖(フルクトース)のダメージを修復するのはDHAだった!

phm21_0877-s果糖(フルクトース)のダメージを修復するのはDHAだった!

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者らによると、ジュースや食品の甘味料として用いられている果糖(フルクトース)が、短期記憶を司る海馬の遺伝子約200種類と、体の代謝を司る視床下部の遺伝子約700種類の遺伝子を損傷させて、記憶力や認知力を低下させている可能性があり、さらにフルクトースによって受けたダメージが、魚油、クルミ、亜麻仁油、果物、野菜に含まれ、脳のシナプスを強化して学習・記憶能力を高めるDHA(ドコサヘキサエン酸)によって改善されることが動物実験で明らかになり、2016年4月の『EBioMedicine』オンライン版で発表されました。この雑誌は、有名な科学雑誌『Cell』と『Lancet』が共同で出版しているものです。

果糖(フルクトース)は、コーンシロップ、コーンスターチから作られた安価で低カロリーの甘味料として、ジュースやお菓子などを中心に幅広く使用されていますが、一方で肥満、糖尿病、心血管疾患、注意欠陥多動障害、アルツハイマー病などを引き起こす可能性があるという研究結果も報告されています。2014年にはアメリカ人が年間約12㎏のフルクトースを消費することが報告されています。

今回の研究で、フルクトースによる脳内の遺伝子損傷が、初期の段階では「BGN」と「FMOD」という遺伝子の発現によって引き起こされ、その後、ドミノ倒しのように次々と数百の脳内遺伝子の損傷が引き起こされているということです。

さらに研究者らは、フルクトースによる脳の遺伝子損傷が、DHA(ドコサヘキサエン酸)によって食い止められることを、大量のフルクトースを投与したラットのグループ、フルクトースとDHAを投与したグループ、水だけを投与したグループの3グループで比較した実験で明らかにしました。

Qingying Meng, Zhe Ying, Emily Noble, Yuqi Zhao, Rahul Agrawal, Andrew Mikhail, Yumei Zhuang, Ethika Tyagi, Qing Zhang, Jae-Hyung Lee, Marco Morselli, Luz Orozco, Weilong Guo, Tina M. Kilts, Jun Zhu, Bin Zhang, Matteo Pellegrini, Xinshu Xiao, Marian F. Young, Fernando Gomez-Pinilla, Xia Yang. Systems Nutrigenomics Reveals Brain Gene Networks Linking Metabolic and Brain Disorders. EBioMedicine, 2016

深い睡眠が記憶を定着させる

phm20_0150-s眠りは記憶の定着にとても重要だと言われていますが、

具体的に眠っている間に私たちの脳がどうやって記憶を定着させているかのメカニズムに関しては、まだよくわかっていません。

カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者らは、睡眠中の記憶定着のメカニズムについての新しい成果を2016年4月の『Journal of Neuroscience』に発表しました。

これによると、私たちの脳では、睡眠中に、非急速眼球運動(目玉を動かさずにぐっすり深い眠りに落ちているとき、ノンレム睡眠:NREM)睡眠および急速眼球運動(眠りながらまぶたを閉じて目玉がぐるぐる動いている状態、レム睡眠、REM)睡眠で構成されています。

だいたい 8時間の睡眠中に、4~5サイクルのレム―ノンレム睡眠のサイクルがあり、レム―ノンレム睡眠が1セット90分~110分ごとのサイクルで訪れ、総睡眠時間の前半3分の1あたりに深い眠りが訪れます。

短期記憶を収納している海馬では、この深いノンレム睡眠の時に、鋭波が発生していることが確認され、電気的な活動が活発になり、その鋭波が長期記憶を収納する大脳皮質に伝わっていることが明らかになりました。

やはり、深い眠りの間に、短期記憶から長期記憶への情報の移し替え、置き換えが行われており、それを海馬の動きからも確認することができたということで、記憶の定着には、深い睡眠が重要だということのようです。

Y. Wei, G. P. Krishnan, M. Bazhenov. Synaptic Mechanisms of Memory Consolidation during Sleep Slow Oscillations. Journal of Neuroscience, 2016

揚げ過ぎフライドポテトに要注意

クリスピーフライドポテトとか、カリカリに良く揚げた細切りのジャガイモが、香ばしくっておいしいですが、これに含まれる「アクリルアミド」には、発がん性があることが指摘されています。アメリカ食品医薬品局でも、2016年にアクリルアミドを含む食品の取り扱いについての新しいガイドラインを発表しています。これを受けて2016年3月には、アメリカ作物学会の学会誌『Crop Science』で、アクリルアミドが発生しにくいジャガイモの品種改良研究についても報告しています。

アクリルアミドは、アスパラギンというアミノ酸と糖を含む食品を120℃以上で調理することで発生する物質で、高温で調理されたフライドポテト、せんべい、クッキー、パン、かりんとう、コーヒー、ほうじ茶などにもアクリルアミドが多く含まれています。

新しいFDAのガイドラインに記されたフライドポテトを食べる際に注意すべきポイントは、以下の通りです。

① フライドポテトを揚げる際には、表面が濃い茶色になるほど揚げず、黄色くなる程度の状態で食べるようにする。
② 冷凍食品のフライドポテトを調理する際も、パッケージに表示された調理時間以上の時間をかけて加熱しないこと。
③ ジャガイモを長期間保存する場合は、冷蔵庫に入れておくとアクリルアミドが発生しやすいので、冷暗所に保管する。

ということで、クリスピー、こんがり、カリカリのフライドポテトは、おいしいけれども、健康にはプラスにはならないことを知っておきましょう。

Yi Wang, Paul C. Bethke, Alvin J. Bussan, Martin T. Glynn, David G. Holm, Felix M. Navarro, Richard G. Novy, Jiwan P. Palta, Mark J. Pavek, Gregory A. Porter, Vidyasagar R. Sathuvalli, Asunta L. Thompson, Paul J. Voglewede, Jonathan L. Whitworth, David I. Parish, Jeffrey B. Endelman. Acrylamide-Forming Potential and Agronomic Properties of Elite US Potato Germplasm from the National Fry Processing Trial. Crop Science, 2015

「扱いにくい患者」と思われると誤診されやすい

phm06_0144-s 医者にとって「扱いにくい患者」や「好感度が低い患者」は、正しい診断が受けにくく「誤診」されやすいことが、オランダで行われた医師や研修医に対して行った研究結果で明らかになり、2016年3月の『BMJ Quality & Safety』に発表されました。

 この研究では、63人の医師に協力してもらい、扱いにくく、好感度の低い患者さんと、そうでない普通の患者さんに対する、診断結果の正確性について比較しました。「扱いにくく、好感度の低い患者さん」とは具体的にこの研究では、「医師に対して攻撃的」、「医師の能力に対して疑問を口にする」、「医師のアドバイスを無視する」、「投げやり」、「まったく協力的でない」、などの態度が目立つ患者さんを差します。

 その結果、医師に扱いにくいと思われて、好感度が低い患者さんは、そうでない普通の患者さんよりも、複雑な病気や病状の場合には42%、比較的診断しやすい病気や症状では6%ほど、それぞれ誤診されるリスクが高いことが明らかになりました。

 より質の高い医療を受けるためには、医師に対しての最低限の礼儀や敬意も大切で、「患者様」的な態度で威張ったり、反抗的な態度を取ったり、感情的になって怒鳴るなどの行為は、避けた方が良いようです。

Sílvia Mamede, Tamara Van Gog, Stephanie C E Schuit, Kees Van den Berge, Paul L A Van Daele, Herman Bueving, Tim Van der Zee, Walter W Van den Broek, Jan L C M Van Saase, H G Schmidt. Why patients’ disruptive behaviours impair diagnostic reasoning: a randomised experiment. BMJ Quality & Safety, 2016

 

 

音楽を聴いたりテレビを見ながら食べると食べ過ぎる

phm21_0052-s 大きな音で音楽を聴いたり、テレビを見ながら食べると、食べ過ぎてしまうこと、ご存知でしたか?

米国ブリガム・ヤング大学とコロラド州立大学の研究によると、食事のときに大きな音で音楽を聴いたり、

テレビを見たりすると、食べ過ぎてしまうことが明らかになり、2016年3月の『Food Quality and Preference』に報告されました。

この研究では、被験者に食事の際に大きな音で音楽やテレビを見てもらったときと、静かな場所で食べてもらったときの

食べた量を比較したところ、大きな音を聴いていたときのほうが、約1.45倍も多く食べていたことが明らかになりました。

この結果について研究者らは、食事のときに、カリカリ、モグモグ、むしゃむしゃなど、自分が食べる音を自分自身で自覚すると、

食べたことを正しく認識することができるのに対し、大きな音で音楽などを聴きながら食べていると、

自分がどれだけ食べたかという認識が甘くなり、つい食べ過ぎてしまう傾向があることを指摘し、肥満の予防のために、

食事の時には、静かな環境で、自分の食べる音を確認して食べ過ぎないようにする「Crunch Effect(モグモグ効果)」について、人々に普及させるべきだと述べています。

Ryan S. Elder, Gina S. Mohr. The crunch effect: Food sound salience as a consumption monitoring cue. Food Quality and Preference, 2016

がんサバイバーのうつ予防に朝の光(光治療)が効果あり

phm22_0718-s「がんサバイバー(Cancer Survivors:がん生存者)は、がんを克服(完治)した人だけではなく、がんと診断されて治療中の人、部分寛解(症状が改善されたものの、一部分異常が残っている状態)の人、完全寛解(症状が消えて、検査でも異常がない)の人など、がんに罹ったことがある人は「がんサバイバー」となり、一生「がんサバイバー」であり続けます。アメリカでは「がんサバイバー」の治療効果を高め、回復を早めて、再発や転移を防ぎ、その人らしい人生を生きるために生活の質の維持・向上をサポートする研究がさかんに行われています。

光が体内時計を調整したり、うつ病の改善効果があることは知られており、「光療法」として実際の治療に活用されています。
米国ニューヨーク州にあるマウントサイナイ医科大学が中心となって行われた研究によると、「がんサバイバー(Cancer survivors:がん生存者)」を対象に行った研究から、朝、明るい光を一定期間浴びると、うつ病の予防や、概日活動リズムの調整に役立つことが、2016年3月、コロラド州で行われている米国心身医療学会で報告されました。

この研究は、がんを克服した「がんサバイバー」54人を、朝目覚めてから毎日30分ずつ合計4週間、明るい「白色灯」の下で過ごしてもらうグループと、薄暗い「暗赤灯」の中で過ごしてもらうグループに分けて、実験前後の抑うつ状態と概日活動リズムを比較しました。

その結果、薄暗い「暗赤灯」の下で過ごしたグループでは、抑うつ状態や概日活動リズムの乱れが改善されたことは確認できませんでしたが、明るい「白色灯」の下で過ごしたグループでは、抑うつ状態の改善が見られ、概日活動リズムのずれも改善されていることが明らかになりました。

全米がん協会によると、「がんサバイバー」は、がんの治療が終了しても、がんの再発に対する恐れや、仕事や経済面での不安などに直面して、4人に1人が、うつ病に近い状態になっているということで、研究者らは、今回の研究をもとに、「がんサバイバー」向けのうつ病や概日リズムの乱れを改善する光治療を開発する必要があると述べています。

March 10, 2016 American Psychosomatic Society in Denver, CO.
http://www.prweb.com/releases/2016/03/prweb13257740.htm

男同士の友情(ブロマンス)は男性の健康にプラスに働く

phm11_0244-sブロマンス(Bromance)とは、性的な関係を持たない男同士の友情のことで、Brother(兄弟)+Romance(ロマンス)をくっつけた造語です。

最近では「ブロマンス映画」などという映画のジャンルも人気で、古くはスティーヴ・マックィーンとダスティン・ホフマンの『パピヨン』、また性的関係の有無は定かではありませんが、時代を超えて人気の『シャーロック・ホームズ』などがその代表的な名作と言えます。

米 国カリフォルニア大学バークレー校の研究によると、オスのラットに適度なストレスを与えると、ストレスを与えないときよりも、オス同士で抱擁し合ったり、 グループとしての結束力が高まったり、うつ的な不安の強い行動をとるラットが少なくなることが明らかになり、脳の視床下部のオキシトシンという「思いやり ホルモン」のレベルが高まっていました。オキシトシンは、不安やうつ的な状態を回避し、幸福感や充足感を高めるホルモンとして知られています。

Sandra E Muroy, Kimberly LP Long, Daniela Kaufer, Elizabeth D Kirby. Moderate Stress-Induced Social Bonding and Oxytocin Signaling are Disrupted by Predator Odor in Male Rats. Neuropsychopharmacology, 2016

水を多く飲むと食生活が健康になる

水を多く飲むと食生活が健康になる

米国gum06_ph08058-sイリノイ大学の研究によると、1日コップ1~3杯、水を飲む量を増やすことで、ナトリウム、砂糖、コレステ ロール、飽和脂肪酸の摂取量が減ることが明らかになり、2016年3月の『Journal of Human Nutrition and Dietetics』に発表されました。

この研究は、2005年~2012年に、約18,300人の成人したアメリカ人の食生活を分析し たもので、1日1~3杯のコップの水を多く飲むと、総摂取カロリーが68~205キロカロリー、ナトリウムは78~235g、砂糖は5~18g、コレステ ロールは7~21g、それぞれ減少することが明らかになりました。

この結果について研究者らは、水を飲む量を増やすだけで、食習慣の改善 ができ、生活習慣病の予防や改善にも貢献する可能性があり、とくにアメリカでは、砂糖入りのジュースや飲料の代わりに水を飲むことを推奨するだけで、社会 問題となっている肥満を改善できるのではないかと述べています。

R. An, J. ‎McCaffrey. Plain water consumption in relation to energy intake and diet quality among US adults, 2005-2012. Journal of Human Nutrition and Dietetics, 2016

ブロッコリーは肝臓を守る

米国イリノイ大学の研究によると、ブロッコリーをはじめとするアブラナ科の植物に含まれ る成分に、肝臓の機能を保護する働きがあり、肝臓がんや肝硬変の予防に役立つ可能性があることが明らかになり、2016年3月の『Journal of Nutrition』で報告されました。

ブロッコリーなどのアブラナ科の植物に含まれるフィトケミカル〈植物が害虫や紫外線などから自分を守るために蓄えている成分)の一種「スルフォラファン」は、解毒作用、抗酸化作用、花粉症の緩和、悪酔い軽減、メタボ予防などの健康効果があることが明らかになっています。

今回のイリノイ大学の研究では、マウスを用いた実験で、ブロッコリーに含まれる「スルフォラファン」が、肝臓での脂肪の蓄積を抑制し、肝臓の機能を健康に維持することに貢献することが明らかになりました。

研究者らは、週に3~4回、ブロッコリーを食べることで、飲み過ぎや食べ過ぎなどによる肝機能の低下を防ぐことができるかもしれないと述べています。

Y.-J. Chen, M. A. Wallig, E. H. Jeffery. Dietary Broccoli Lessens Development of Fatty Liver and Liver Cancer in Mice Given Diethylnitrosamine and Fed a Western or Control Diet. Journal of Nutrition, 2016