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デジタルメディアは若者の幸福度を高めない

【デジタルメディアは若者の幸福度を高めない】
2016年の日本国内のインターネット利用者は、1億84万人、人口普及率は83.5%と上昇傾向にあります。パソコンやスマホで調べたいことや必要な情報を24時間いつでも入手することができ、赤の他人もつながることができるインターネットは実に便利で、利用者が増加するのも当然です。さて、私たちはインターネットで幸福になっているのでしょうか?そんなインターネットなどのデジタルメディアと幸福感に関する興味深い研究結果がありましたので紹介します。
米国サインディエゴ大学が1991年から2016年までに、米国の若者(8学年=中学2年生、10学年=高校1年生、12学年=高校3年生)110万人を対象に行った調査によると、パソコンやスマートフォンなどの画面を見る時間の多い10代の若者は、見る時間が少ない若者に比べて、幸福度が低いことが明らかになり、2018年1月の『Emotion』で発表されました。
この研究で、最も幸福度が高いと回答した10代の若者は、パソコン、スマホなどを使っている時間が1日1時間未満でした。さらにデジタルメディアとの接触時間が延びれば延びるほど、幸福度は低下する傾向にありました。この結果は、若者の睡眠時間とも関係しており、デジタルメディアに接触する時間が長い若者ほど、睡眠時間が短いことも明らかになりました。
私がいまとても心配なのは、子育て中のお母さんがスマホばかり見て、子どもに話しかけたり、子どもを見つめる時間が少なくなっているのではないかという不安です。子どもと一緒のときはなるべく子どもの顔を見て話しかけてください。

Jean M. Twenge, Gabrielle N. Martin, W. Keith Campbell. Decreases in Psychological Well-Being Among American Adolescents After 2012 and Links to Screen Time During the Rise of Smartphone Technology.. Emotion, 2018

仕事を自宅に持ち帰ると疲れが取れない

今日からお正月休みの方も多いと思います。仕事納めまでに仕事が終わらずに、自宅に資料を持ち込んでお休みしている方も多いと思いますが、ちょっと気になる研究成果をご紹介します。

スイスのチューリッヒ大学の研究で、休日に自宅に持ち帰って仕事をしたり、自宅で仕事関係者のメールチェックをする人は、自宅で仕事をしない人に比べて疲労度が高く、幸福感が低いことが、2017年12月12日のオンライン版『Journal of Business Psychology』で発表されいました。

この研究は平均年齢42.3歳でドイツ語圏で生活する男女(男性が55.8%)1916人を対象に実施されたもので、被験者の50.1%が週40時間以上働いていました。そして週末に自宅で仕事をしたり、仕事関連のメールをチェックするかどか、身体的・精神的な疲労感、幸福感などについて質問しました。

その結果、仕事時間と自由時間の明確な隔たりがなく、自宅で仕事をしたり、自由時間に仕事のことを考える頻度が高い人は、そうでない人に比べて疲労感が強く、幸福感が低いことが明らかになりました。

これについて研究者は、「仕事の効率を高めるためにも、自宅に仕事を持ち帰ったり、休み中に仕事のことを考えないようにして、仕事時間と自由時間の境界をしっかりと区切って生活する必要が、身体的・精神的な疲労を蓄積させないためにも重要で、最終的には仕事の生産性と想像性を高めることになる」と述べています。

Wepfer, A.G. et al. Work-Life Boundaries and Well-Being: Does Work-to-Life Integration Impair Well-Being through Lack of Recovery? Journal of Business and Psychology, 2017

お金持ちと貧乏な人が感じる幸福は別物

【お金持ちと貧乏な人が感じる幸福は別物】
米国カリフォルニア大学アーバイン校の研究によると、裕福な人が貧しい人よりも必ずしも幸福だと感じていないという研究結果が、2017年12月の『Emotion』に掲載されました。この研究は、1519人の米国人を対象に幸福感に関する調査結果を分析したもの。被験者を所得階層で分類し、幸福の7つの構成要素として選択された「娯楽」「畏敬の念」「思いやり」「満足感」「熱意」「愛」「誇り」について質問したところ、高所得者層では「誇り」「満足感」に対するスコアが高く、低所得者層では「思いやり」「愛」「畏敬の念」そして世界に対する美しさをより強く感じていました。この結果について研究者らは、高所得者は自分自身に対する自信や満足感が高い一方、低所得者層では、他者に対する愛や人間関係に、より高い満足や幸福を感じる傾向があると分析しています。そして、高所得であれば健康状態が良く長生きできる人が多く、低所得者のほうが健康状態が悪く寿命が短いという傾向はあるものの、富が人の幸福感を高めると一概には言えないことが、今回の研究で明らかになったと述べています。
Paul K. Piff and Jake P. Moskowitz. Wealth, Poverty, and Happiness: Social Class Is Differentially Associated With Positive Emotions. Emotion, December 2017

頭の良い人は長生き?共通の遺伝子を発見

米国ニューヨークのファインスタイン医学研究所の研究で、全般的な認知能力の高さ、IQの高さ、教育レベルの高さを持つ人、いわゆる高い認知能力を持つ人に共通する遺伝的な素因は、長寿の人が持つ遺伝的素因と重複していることなどが明らかになり、2017年11月の「Cell Report」オンライン版で報告されました。

これはファインスタイン医学研究所のLencz教授が率いる65人の研究者チームが、神経心理学的検査によって脳機能を測定した10万人のゲノム解析の結果を、
脳が知識をどのように獲得するかを調べるために行った「最高レベルの教育達成度を持つ人」を対象とした30万人のゲノム解析結果と比較しました。

その結果、ヒトの一般的な認知能力に関連する数十の新しい遺伝子変異を発見しました。さらに認知能力をプロファイリングしていくと、認知能力と寿命との遺伝的重複を発見しました。つまり、IQ、認知機能、教育レベルが高いなどの高次認知能力に対する遺伝的素因があると、より寿命が長いことが発見されました。また認知能力と自己免疫疾患のリスクとの間の新たな遺伝的重複も同定されました。

これについて研究者は、ヒトの遺伝子が認知能力にどのような影響を及ぼすか、さらには認知能力と寿命の関係や、かかりやすい病気などとの関係を調べることで、アルツハイマー病、統合失調症、注意欠陥多動性障害などの脳の機能障害に対する新しい治療法の開発につながる可能性があることを示唆しています。

Max Lam et al. Large-Scale Cognitive GWAS Meta-Analysis Reveals Tissue-Specific Neural Expression and Potential Nootropic Drug Targets. Cell Reports, 2017

シナモンは脂肪の燃焼を促進する

シナモンが脂肪細胞の燃焼を促進し、肥満を予防する働きを持つことが明らかになり、2017年11月の「Metabolism」で発表されました。

この研究は、米国ミシガン大学のライフサイエンス研究所によるもので、シナモンの香りの成分である「シンナムアルデヒド」という物質が、ヒトの脂肪細胞に働いて、脂質代謝を高めて脂肪の燃焼を促進することや、脂質代謝を高める酵素の発現を増加させたり、エネルギー代謝に関係する 脱共役タンパク質1 Ucp1や、線維芽細胞成長因子 Fgf21などが増加して、脂肪をエネルギーに分解する働きを高めていることが明らかになりました。

シナモンは桂皮という名前で漢方薬としても、何千年もの昔から健康に役立つものとして活用され、殺菌作用や甘い香りなどで親しまれてきましたが、肥満の治療にも役立つ可能性があることがそのメカニズムとともに今回の研究で明らかになりました。

Juan Jiang, Margo P. Emont, Heejin Jun, Xiaona Qiao, Jiling Liao, Dong-il Kim, Jun Wu. Cinnamaldehyde induces fat cell-autonomous thermogenesis and metabolic reprogramming. Metabolism, 2017

腕立て伏せと腹筋でがん死・早発死を予防できる

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オーストラリア・シドニー大学のなどの研究によると、腕立て伏せと腹筋を行うことで、がん死や早発死のリスクを軽減できることが明らかになり、2017年10月31日発行の『American Journal of Epidemiology』に掲載されました。

この研究は、シドニー大学が中心となり、約8万人のデータを分析したもの。WHO(世界保健機構)では、成人に対して週に2回の筋肉強化運動と、週に150分の有酸素運動を推奨していますが、「オーストラリア全国栄養及び身体活動調査」の結果によると、約85%のオーストラリア国民が、この推奨基準を満たしていませんでした。

一般的に、筋肉強化運動といえば、「スポーツジムに行って機械を使ってウエイトトレーニングなどを行うこと」をイメージするために、一般の人にとっては、費用の問題やスポーツジムに行く時間を捻出することの難しさなどが障害になり、十分な運動ができていないことが推察されます。

そこでシドニー大学の研究者らは、「英国健康調査(HSE)」と「スコットランド保健調査(SHS)」のデータを用いて、SPE(ジムベースおよび自体重量活動)の実施状況と、がん、および心臓血管疾患の死亡率との間の関連性を調べました。研究はコアサンプル数が、30歳以上の成人80,306人で構成され、そのうち死亡者5,763人の死因と、「筋肉強化運動」への取り組み状況を分析しました。

その結果、筋肉強化運動のみを行った場合、全死因死亡率が23%減少し、がん死亡率が31%減少していることが明らかになりました。一方で、心血管疾患による死亡リスクとは関連性がありませんでした。
また有酸素運動のみを週に150分以上行った場合は、全死因死亡率が16%低下し、心血管疾患による死亡リスクが22%低下していましたが、がん死のリスクに関しては関連性がありませんでした。
筋肉強化運動と有酸素運動を、両方ともに行った場合は、全死因死亡率が20%低下、がん死亡率が30%低下していました。

さらにこの研究では、特定の装置なしで自重(自分の体重)を使って行うエクササイズも、ジムベースのトレーニングと同じくらい効果的であることが示されています。

結論としてシドニー大学の研究者は、継続的に筋肉強化運動を行うことが疾患予防と健康寿命の延伸につながり、その方法としては、スポーツジムに行ったり、器具を使うウエイトトレーニングなどではなく、腕立て伏せや腹筋など、自宅や公園などで手軽にできる運動でも十分な効果が得られると述べています。

Emmanuel Stamatakis, I-Min Lee, Jason Bennie, Jonathan Freeston, Mark Hamer, Gary O’Donovan, Ding Ding, Adrian Bauman, Yorgi Mavros. Does strength promoting exercise confer unique health benefits? A pooled analysis of eleven population cohorts with all-cause, cancer, and cardiovascular mortality endpoints. American Journal of Epidemiology, 2017

一価不飽和脂肪酸が知能を高める

一価不飽和脂肪酸が知能を高めるメカニズム

 

米国イリノイ大学の研究で、オリーブオイル、ナッツ類、アボカドに多く含まれる一価不飽和脂肪酸が、脳の背側経路(物体の位置を認識する機能を担う)に働きかけて知能を高めていることが明らかになり、2017年9月の『NeuroImage』で紹介されました。これまでの研究では、知能と一価不飽和脂肪酸との相関関係が認められましたが、一価不飽和脂肪酸が脳のどの部分に働きかけて、知能を向上させているかについては明らかになっていませんでした。

 

Marta K. Zamroziewicz, M. Tanveer Talukdar, Chris E. Zwilling, Aron K. Barbey. Nutritional status, brain network organization, and general intelligence. NeuroImage, 2017

https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2017.08.043

朝食をしっかり食べると血管もきれいに

DX107_L2017年10月の米国心臓病学会のジャーナルに掲載された研究報告によると、朝食を抜いたり、ジュースなどしか食べなかったりする生活を続けている人は、朝食を食べる人よりもアテローム性動脈硬化症になるリスクが高いことが明らかになりました。

 

この研究は、 心臓病や腎臓病でない4052人を対象に行われ、事前に①朝食を食べないグルプ、②朝食で1日の総エネルギーの5~20%しか食べない人、③朝食で1日の総エネルギー量の20%以上を食べる人、に分類しました。それぞれの割合は、①が2.9%、②が69.4%、③が27.7%でした。

 

朝食を食べない人の特徴としては、全体的な栄養バランスの悪さ、頻繁なアルコール消費、喫煙など、全般的に不健康な生活が目立ちました。

 

調査の結果、朝食を食べない人は、腹囲、BMIも大きく、肥満傾向にある人が多く、さらに高血圧や中性脂肪、コレステロール値が高いことも判明し、将来的に動脈硬化になるリスクが朝食をとる人よりも高いことが明らかになりました。

 

この結果について、現代では成人の20~30%が朝食を抜いており、この影響で、その後の食事時間の乱れや過食、概日リズムの乱れ、ホルモン分泌のバランスの乱れ、不健康な食生活、睡眠不足などを招き、さらに幼少期からの朝食抜きの生活が、小児肥満にも影響を及ぼしている可能性があると指摘してます。

 

Irina Uzhova, Valentín Fuster, Antonio Fernández-Ortiz, José M. Ordovás, Javier Sanz, Leticia Fernández-Friera, Beatriz López-Melgar, José M. Mendiguren, Borja Ibáñez, Héctor Bueno, José L. Peñalvo. The Importance of Breakfast in Atherosclerosis Disease. Journal of the American College of Cardiology, 2017; 70 (15): 1833 DOI: 10.1016/j.jacc.2017.08.027

2017年10月の米国心臓病学会のジャーナルに掲載された研究報告によると、朝食を抜いたり、ジュースなどしか食べなかったりする生活を続けている人は、朝食を食べる人よりもアテローム性動脈硬化症になるリスクが高いことが明らかになりました。

この研究は、 心臓病や腎臓病でない4052人を対象に行われ、事前に①朝食を食べないグルプ、②朝食で1日の総エネルギーの5~20%しか食べない人、③朝食で1日の総エネルギー量の20%以上を食べる人、に分類しました。それぞれの割合は、①が2.9%、②が69.4%、③が27.7%でした。

朝食を食べない人の特徴としては、全体的な栄養バランスの悪さ、頻繁なアルコール消費、喫煙など、全般的に不健康な生活が目立ちました。

調査の結果、朝食を食べない人は、腹囲、BMIも大きく、肥満傾向にある人が多く、さらに高血圧や中性脂肪、コレステロール値が高いことも判明し、将来的に動脈硬化になるリスクが朝食をとる人よりも高いことが明らかになりました。

この結果について、現代では成人の20~30%が朝食を抜いており、この影響で、その後の食事時間の乱れや過食、概日リズムの乱れ、ホルモン分泌のバランスの乱れ、不健康な食生活、睡眠不足などを招き、さらに幼少期からの朝食抜きの生活が、小児肥満にも影響を及ぼしている可能性があると指摘してます。

Irina Uzhova, Valentín Fuster, Antonio Fernández-Ortiz, José M. Ordovás, Javier Sanz, Leticia Fernández-Friera, Beatriz López-Melgar, José M. Mendiguren, Borja Ibáñez, Héctor Bueno, José L. Peñalvo. The Importance of Breakfast in Atherosclerosis Disease. Journal of the American College of Cardiology, 2017; 70 (15): 1833 DOI: 10.1016/j.jacc.2017.08.027

高カロリー食品は肥満に関係なく中高年女性のがんリスクを高める

高カロリー食品は肥満に関係なく中高年女性のがんリスクを高める

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米国の閉経後女性約9万人を対象としたデータを分析した結果、ハンバーガーやピザをはじめとする高カロリー食品は、肥満の有無やBMIに関係なく、少なからずがんの発症リスクを高めることが明らかになり、2017年8月の『Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics』で発表されました。

この研究は米国で実施されたWomen’s Health Initiativeという大規模調査結果によるもので、50歳~79歳の閉経を迎えた女性92,295人のデータを解析した結果によるもの。これによると、1グラムあたりのカロリー量が多い食品(ハンバーガー、ピザ、砂糖入り菓子、加糖飲料水など)をたくさん食べている女性は、1グラムあたりのカロリーが少ない食品(野菜、果物、大豆製品、低カロリー食品など)をたくさん食べている女性に比べて、MBIや肥満などに関係なく、がんを発症するリスクが約10%高く、高カロリー食品の摂取を控えることで、がんの発症を30%ほど抑制できる可能性があることを指摘しています。

Association between Dietary Energy Density and Obesity-Associated Cancer: Results from the Women’s Health Initiative. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 2017

血圧の日常変動が認知症発症リスクと関係

日常の血圧変動が大きいと認知症の発症リスクが高まることが、日本人を対象とした研究(久山町研究)で明らかになり、2017年8月の『Circulation』で発表されました。

この研究は、認知症のない60歳以上の男女1674人(平均年齢71歳、女性55.9&)を2007年~2012年の5年間、自宅で毎朝3回測定してもらい、調査をした結果によるもの。

経過観察中に194人(男性72人、女性122人)が認知症を発症し、そのうち47人が血管性認知症、134人がアルツハイマー型認知症でした。

家庭で毎朝測定した血圧の数値を、血圧が135mmHg以上と未満、血圧の変動が多いグループと少ないグループに分類して、認知症の発症との関連性を分析した結果、家庭血圧の日々の変動が大きいことが認知症リスクと関係していることがわかりました。

さらにアルツハイマー型認知症の発症リスクは、血圧の値に関係なく、日々の変動が大きいことが関係し、血管性認知症の場合は、血圧変動が大きい、または血圧の数値が高いことが発症リスクと関係していることが明らかになりました。

今までの研究では、高血圧と認知症のリスクの研究はありましたが、日々の血圧の変動と認知症の発症リスクの関係について調べたものは今回が初めてで、日々の血圧変動が認知症予防の介入目標の1つになる可能性について示唆しています。

『Circulation』,2017 Aug 8;136(6):516-525.