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三人称で自問自答すると怒り、不安、ストレスが和らぐ

rinsiストレスを感じたとき、自問自答するよりも、第三者の口調(三人称)で静かに話しかけることで、感情をコントロールし、気持ちを落ち着かせることができるという米国ミシガン州立大学の研究が2017年7月の『Scientific Report』に掲載されました。研究によると、心の中で「私はなぜ動揺しているのだろう?」と問いかけるよりも「太郎はなぜ動揺しているのだろう?」と三人称の表現で自分自身に問いかけること(三人称セルフトーク)で、より効果的に感情をコントロールして気持ちを落ち着かせることができるということです。

研究は、少人数を被験者として行われた、fMRIを使った脳血流や、ERPを使って情動や思考の変化による脳波の動きを分析した結果によるもの。研究者らは、「三人称セルフトーク」は、第三者の言葉を使って自分に問いかけることで、他人に質問されたときと同じような思考回路にすることができ、自分の追い詰められた感情や思考から少し距離を置いて、第三者的な立場から客観的に思考することができるようになり、これによって感情を調節することができ、不安、動揺、怒り、悲しみを沈め、突発的な行動による失敗やさらなる後悔によるストレスの増大を避けられる可能性があると述べています。

Jason S. Moser, Adrienne Dougherty, Whitney I. Mattson, Benjamin Katz, Tim P. Moran, Darwin Guevarra, Holly Shablack, Ozlem Ayduk, John Jonides, Marc G. Berman, Ethan Kross. Third-person self-talk facilitates emotion regulation without engaging cognitive control: Converging evidence from ERP and fMRI. Scientific Reports, 2017

幸福感、トンネル、明るい光が臨死体験に多い

GN022_L臨死体験の話を聞いたことがありますか? そもそも臨死体験というもの自体が本当に起こるものなのでしょうか?

ベルギーのリエージュ大学などの研究によって、臨死体験には、体外離脱、幸福感、明るい光、トンネルなど、共通点があることがわかり、2017年7月の『Frontiers in Neuro Science』に掲載されました。

研究は、154人の臨死体験をした人(事前にインターネットなどで募集をかけた)のアンケート結果を分析したもので、臨死体験中に全体の80%が「幸福感」、69%が「明るい光」、64%が「魂や人との接触(遭遇)」を体験していました。さらに35%が「体外離脱」を臨死体験の最初の時点で体験し、36%が臨死体験の最後のほうで「自分の体に戻る」経験をしていました。さらに22%(6人)に共通していた臨死体験の一連の流れは、「最初に体外離脱が起こり、その後トンネルの中に入って、暗闇の中から明るい光が見え、『自分は幸せだ』という感情がわき起こり、最後に自分自身の体に戻る」というものでした。

研究者は、臨死体験の内容は体験した人の文化的背景や死に至るまでの神経生理学的なメカニズムなどにも影響を受けるため、共通性を発見するのは難しいと思われたが、 異なる現象がどのように関連しているかを探ることで、死に至る経験を全体としてより厳密な定義と、より高度な科学的解釈を導くことができるかもしれないと述べています。

Charlotte Martial, Héléna Cassol, Georgios Antonopoulos, Thomas Charlier, Julien Heros, Anne-Françoise Donneau, Vanessa Charland-Verville, Steven Laureys. Temporality of Features in Near-Death Experience Narratives. Frontiers in Human Neuroscience, 2017

認知症予防には中年肥満を回避しよう!

AT191_L中年期にBMI30以上の肥満だった人は、認知症になるリスクが高いことがスイス・ジュネーブ大学の研究で明らかになり、2017年8月の『Alzheimer’s & Dementia』に掲載されました。

この研究は、過去に実施された最大42年間追跡調査された男女合計589,649人の体重と認知症に関するデータを解析した結果によるもので、35歳~65歳までの間にBMIが30以上の人は、1.33倍認知症を発症するリスクが高いことが明らかになりました。中年期のBMIが25~30未満の人に関しては、認知症との関連性は認められませんでした。

「ちょい太め」はセーフだけれども、「明らかに肥満」はボケるリスクが高まるので、中年以降は体重をこまめに測って太りすぎないように注意しましょう。

◆出典  Body mass index in midlife and dementia: Systematic review and meta-regression analysis of 589,649 men and women followed in longitudinal studies

http://dx.doi.org/10.1016/j.dadm.2017.05.007

ヨガで認知機能低下を予防できる

ヨガで認知機能低下を予防できる

ブラジルの研究で、ヨガは老年期の認知機能の低下を防ぐことが明らかになり、2017年7月の『Frontiers in Aging Neuroscience』で発表されました。

この研究は、ヨガを8年以上、週に2回以上、継続的に行ってきた60歳以上の女性21人と、ヨガの経験がない健康な60歳以上の女性21人の脳の状態をMRI画像で比較しました。その結果、ヨガを継続的に行ってきた女性の脳は、ヨガの経験がない女性に比べて、左側の前頭前皮質が厚いことが明らかになりました。脳のこの部分は、ワーキングメモリ(作業記憶:情報を一時的に記憶して会話や感情のコントロール、読み、書き、計算など日常活動における素早い情報処理を可能にする記憶装置のようなもの)や推論、行動の実行、プランニング、視覚的注意などに関連し、老化に伴ってその機能が衰え始めて記憶力の低下や認知能力の低下が現れます。

すでにいくつかの先行研究で、ヨガや瞑想が他の有酸素運動よりも健康上の利点が多く、注意力や記憶の改善を示すだけでなく、軽度の認知症の高齢者も短期間のヨガトレーニングによって、認知機能が改善することがわかっています。

ヨガは意識的に姿勢を整えてポーズをとり、呼吸をコントロールし、瞑想も行います。研究者は、筋肉と同じように脳はトレーニングによって発達し、ヨガの複合的なトレーニングが脳の構造と機能の維持、老化の抑制に貢献していることを指摘しています。ただし、このようなヨガ実践者の脳の構造の変化は、数年以上の長い期間、ヨガを継続的に行っていた人にのみ確認できるそうで、長期間ヨガを継続することが必要だということです。

Rui F. Afonso, Joana B. Balardin, Sara Lazar, João R. Sato, Nadja Igarashi, Danilo F. Santaella, Shirley S. Lacerda, Edson Amaro Jr., Elisa H. Kozasa. Greater Cortical Thickness in Elderly Female Yoga Practitioners—A Cross-Sectional Study. Frontiers in Aging Neuroscience, 2017

オリーブオイルはアルツハイマー病予防に役立つ可能性あり

オリーブオイルはアルツハイマー病予防に役立つ可能性あり
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エクストラバージンオリーブオイルが、認知症を予防する働きを持つ可能性があることが、米国テンプル大学ルイスカッツ医科大学の研究で明らかになり、2017年6月の『Annals of Clinical and Translational Neurology』で発表されました。

この研究は、アルツハイマー病を発症するマウスを用いた研究にとって明らかになったもので、このモデルマウスは、アルツハイマー病の原因となる「アミロイド斑」「タウタンパク質」「神経原線維変化」を引き起こしますが、食事の中にエキストラバージンオリーブオイルを豊富に含んだ食餌を6ヶ月間与えられたアルツハイマー病モデルマウスの脳細胞には、通常食を6ヶ月間与えられたモデルマウスに比べて、「アミロイド斑」「タウタンパク質」「神経原線維変化」の量が少ないことが明らかになりました。

この結果について研究者らは、オリーブオイルが脳の炎症を抑制することで、脳細胞のオートファジーの機能を活性化し、細胞内で発生した老廃物を分解するために、「アミロイド斑」「タウタンパク質」「神経原線維変化」などが除去されやすくなるのではないかと推察しています。これまで多くの研究で「地中海食」の健康効果が指摘されていますが、オリーブオイルを豊富に含むという地中海食の特徴が、さまざまな健康効果をもたらしている可能性があるということです。

Elisabetta Lauretti, Luigi Iuliano, Domenico Pratic�. Extra-virgin olive oil ameliorates cognition and neuropathology of the 3xTg mice: role of autophagy. Annals of Clinical and Translational Neurology, 2017

腸内細菌が脳卒中やてんかんを引き起こす?

米国ペンシルベニア大学の研究で、腸内細菌が脳卒中やてんかんの原因となる脳血管の変形や奇形を引き起こす可能性があることを明らかにし、2017年5月の『Nature』で発表しました。
これは、マウスに海綿状血管奇形(CCM)の病変を形成させて、腸内細菌との関連性について研究した結果によるものです。CCMとは、脳血管に小さな粒状のしこりがいくつもできてしまう病気で、ほとんどは自然に小さくなって消滅しますが、大きくなって破けると脳内に血液が漏れて脳卒中やてんかん発作などを起こします。実験では、CCMの病変を悪化させている要因の1つに腸内細菌として人の腸内にも存在する「グラム陰性細菌」があることを特定しました。実際にグラム陰性細菌をマウスの体内から除去すると、CCMを発症したマウスの病変数が大幅に減少することがわかりました。グラム陰性細菌は、細菌自体が死滅しても、その細胞壁に含まれるリポ多糖(LPSなど:グラム陰性菌の外膜の成分であるリポ多糖の一種)が菌内毒素として残り、これが免疫シグナル伝達の強力な活性化因子となって、発熱、炎症、血液凝固作用などを起こすことがわかっています。研究では、マウスにLPSを注射した時にCCMが悪化し、LPSを除去するとCCMの病変が形成されないことも証明しました。研究者らは、ヒトの体内にいる腸内細菌の種類を変えることで、脳卒中やてんかんを引き起こす脳血管の奇形を防ぐことができるかもしれないと述べています。
“Endothelial TLR4 and the microbiome drive cerebral cavernous malformations.” Nature 545, 305–310doi:10.1038/nature22075

Gut-brain connection or gut brain axis. Concept art showing a connection from the gut to the brain. 3d illustration.

Gut-brain connection or gut brain axis. Concept art showing a connection from the gut to the brain. 3d illustration.

やる気を出すならカフェインより階段

af9940034689米国ジョージア大学の研究で、やる気を出すにはカフェインを摂るよりも階段を上り下りしたほうがいいことがわかり、2017年3月の『Physiology & Behavior』に掲載されました。

この研究は18歳~23歳の寝不足が続いている18人の女子大学生に、カフェイン50㎎、プラセボの小麦粉、10分程度の階段歩行を行い、POMS-BFスコアを用いて、やる気や活力を測定し比較した。

その結果、10分程度の階段歩行が最も活力スコアが上昇することが明らかになりました。やる気が出ないときはカフェインに頼りがちですが、体を動かしたほうがやる気は回復するということです。

Physiology & Behavior, Volume 174, Issue null, Pages 128-135

週5回30分のジョギングで9歳若い細胞に

米国ブリガム・ヤング大学の研究によると、日常的にかなり高いレベルの運動習慣がある人は、ない人よりも細胞レベルで9歳も若いことが明らかになり、2017年5月の「Preventive Medicine」に掲載されました。

この研究は、運動習慣と細胞レベルの老化度の関係を調べるために、染色体の末端にある染色体の寿命に関係する「テロメア」の長さを測定した結果によるもの。テロメアが長いほうが細胞寿命が長いことが知られています。

その結果、女性は週5回、30分程度のジョギング(男性は40分)を行っている人は、運動をしていない人に比べて、テロメアが長く、細胞レベルで約9歳も若いことが明らかになりました。

テロメアが短くなる、つまり細胞の寿命が短くなる原因は、「酸化ストレス」と「炎症」であることがわかっており、運動はこの2つの要因を抑制する働きがあるため、定期的にある程度の負荷の運動を行うことで、炎症と酸化ストレスが抑制されて、テロメアの損傷が減り、細胞の寿命が延びるのではないかと研究者らは推察しています。

Larry A. Tucker. Physical activity and telomere length in U.S. men and women: An NHANES investigation. Preventive Medicine, 2017FR082

 

 

家族や友人との人間関係が悪いと認知症リスクが30%高まる

FR126

英国イースト・アングリア大学の研究で、家族や友人などとの良好な関係が認知症を予防することが明らかになり、2017年5月の『Journal of Alzheimer’s Disease』で発表されました。

この研究は2002年~2003年の間に、認知症を発症していない5,475人の男性と4,580人の女性、合計10,055人を対象に、2年ごとに2014年まで、健康状態やライフスタイルの状況についてフォローアップ調査を行った結果によるもの。その結果、10年後の2014年には、被験者10,055人のうち、3.4%の人が認知症を発症していました。

調査結果を分析すると、配偶者やパートナー、子供、その他の直系家族との信頼できる、親しみやすく理解しやすい関係を持つことは、認知症の発症を17%も低下させていました。

さらに、配偶者やパートナー、子供、その他の直系家族との人間関係が悪い状態にあると、認知症の発症リスクが31%も高まってしまうことも明らかになりました。

この結果について研究者らは、良好でない家族関係や、社会的な孤立、孤独などが、高齢者にとって大きなストレスとなり、それが認知症のリスクを高めてしまうことが明らかになり、高齢者の認知症の予防には、良好な家族関係や社会参加を維持するための社会的なサポートが必要であることを指摘しました。

Mizanur Khondoker, Snorri Bjorn Rafnsson, Stephen Morris, Martin Orrell, Andrew Steptoe. Positive and Negative Experiences of Social Support and Risk of Dementia in Later Life: An Investigation Using the English Longitudinal Study of Ageing. Journal of Alzheimer’s Disease, 2017

1日10分の早歩きだけでも高齢女性の心血管病リスクが低下する

1スウェーデンのオレブロ大学の高齢女性を対象とした研究で、1日10分だけ早歩きするだけで、心臓血管病リスクを低下できることがわかり、2017年4月の『PLOS ONE』に掲載されました。

この研究は、65歳から70歳の女性120人を対象に行ったもので、HDLコレステロール、BMI、体重、血圧、腹囲、空腹時血糖、中性脂肪、1日の活動量、運動量を調査したもので、

早歩きやジョギングなどの中程度や激しい運動の時間が10分増えるだけで、心血管病を発症するリスクが低下するころが明らかになりました。

Andreas Nilsson, Britta Wåhlin-Larsson, Fawzi Kadi. Physical activity and not sedentary time per se influences on clustered metabolic risk in elderly community-dwelling women. PLOS ONE, 2017