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乳酸菌やビフィズス菌が不安やうつを改善する可能性

o0640042713805458063腸内細菌叢(腸内フローラ)の状態を良好にする働きを持つ「プロバイオティクス」の代表的なものには「ビフィズス菌」や「乳酸菌」がありますが、これらの一般的に良く知られて、私たちが日常的に口にするプロバイオティクスには、不安やうつ的な傾向を改善する可能性があることが米国ミズーリ大学の動物を用いた研究でわかり、2016年11月の科学雑誌『Scientific Report』に掲載されました。

この研究は、「 ラクトバチルスプランタルム 」という、キムチやザワークラウト、漬物などに含まれるプロバイオティクスを入れた水槽と入れない水槽にゼブラフィッシュを飼育し、水槽内の水を少なくして過密状態の環境下で、さらに水温や分離ストレスを加えた場合、魚の行動にどのような変化が生じるかを検証したもの。

通常、魚はストレスを受けて元気がないときには水槽の底の部分に生息し、ストレスがない場合は、水槽の上部を回遊する傾向があることがわかっています。この研究では、プロバイオティクスを水に混ぜた水槽では、様々なストレスを与えても、水槽の上部を回遊する魚が多くみられたそうです。

この結果について研究者らは、ヒトの不安やうつ的な傾向を軽減するために、ビフィズス菌や乳酸菌などの一般的なプロバイオティクスが役立つ可能性が高いと延べています。

Lactobacillus plantarum attenuates anxiety-related behavior and protects against stress-induced dysbiosis in adult zebrafish. Scientific Reports, 2016

皮膚がバリア機能を保ちながら新陳代謝できるしくみが解明

o1032063013813213195ヒトの皮膚は1時間に2億個の表皮細胞が失われ、さらに1日で50億個の表皮細胞が死んでいきます。それなのに、どうして私たちの皮膚から、体液が漏れ出したりせずに、細菌やウイルスに感染することがないのでしょうか? それは、死んでいく表皮細胞の代わりになる新しい表皮細胞を次々と作り出し、古い細胞と新しい細胞の入れ替えができているからです。

しかし、どうやってバリア機能を保ったまま、古い細胞と新しい細胞の入れ替えができるのか、そのメカニズムについては、未解明でした。このような表皮細胞の代謝メカニズムに関する詳細な研究成果が、英国のインペリアルカレッジロンドンと、慶応大学などの共同研究で明らかになり、2016年11月の『eLife』という科学雑誌に掲載されました。

この研究によると、表皮細胞は「ケルビンの14面体」と呼ばれる同じ形をした「細胞などが最も効率よく隙間を作らずに空間を埋め尽くすことのできる多面体」を平たくつぶした形をしていることが明らかになりました。

さらに、平坦なケルビンの14面体をした表皮細胞同士の隙間を埋めて細胞同士を密着させてウイルスや細菌の侵入を防ぐ役目を果たしている「密着結合(タイトジャンクション:TJ)」があり、このTJが、表皮細胞の代謝のコントロールにも深くかかわっていることが明らかになりました。

研究ではTJが発光するネズミの耳の細胞を使って観察が行われました。古くなって寿命を迎えた表皮細胞の下に、新しい表皮細胞ができると、古い細胞は皮膚の表面に向かって上に押し出され、古い細胞はTJを失うことで、ほかの細胞との密着結合を失って、剥がれ落ちて垢となるように、規則正しくコントロールされていることで、細胞の入れ替わりのときにもバリア機能が失われないのです。

研究者らは、TJが何らかの影響によって「誤動作」することで、皮膚のバリア機能が弱められ、細菌の浸潤、炎症、掻痒、湿疹、アレルギーなどが引き起こされるのではないかと推察しています。

今後の研究では、TJの誤作動でバリア機能が損なわれると、なぜ表皮細胞が過剰に生産されて皮膚が赤く肥厚するのかを解明して新しい治療法を見出したり、加齢に伴うバリア機能の低下や代謝の不活性化を克服して、皮膚のエイジングケアに役立てる方法の開発など、期待が広がります。

動画はこちら

http://dx.doi.org/10.7554/eLife.19593.013

【出典】 Mariko Yokouchi, Toru Atsugi, Mark van Logtestijn, Reiko J Tanaka, Mayumi Kajimura, Makoto Suematsu, Mikio Furuse, Masayuki Amagai, Akiharu Kubo. Epidermal cell turnover across tight junctions based on Kelvin’s tetrakaidecahedron cell shape. eLife, 2016; 5 DOI: 10.7554/eLife.19593

 

頭にこびりついて離れない曲ベスト1はレディー・ガガ

レディー・ガガの「バッドロマンス」を聞いた後、曲のメロディーや菓子のフレーズが脳裏に焼き付いて離れない…そんな経験をする人が多いことが、ロンドン大学などの研究で明らかになり、2016年11月の『 Psychology of Aesthetics』に掲載されました。

これは、2010年から2013年の間に3000人を対象として、「頭にこびりついて離れない曲(ポップス・ロックが中心)は何ですか?」という質問をした結果を分析したもの。その結果、レディー・ガガの曲がベスト9の中に3曲も入りました。

ちなみに頭にこびりついて離れない曲の多くは、①繰り返しのフレーズが多く、②冒頭に覚えやすいメロディーがあり、③不規則な間合いがあり、④曲のテンポが速いという特徴がありました。

*音楽が頭にこびりついて離れない曲は、英語でearwormsと呼ばれるそうです。耳の中でざわざわするミミズみたいな曲っていう感じかな…

 

耳に残る曲ベスト9

 

1. “Bad Romance” by Lady Gaga

2. “Can’t Get You Out Of My Head” by Kylie Minogue

3. “Don’t Stop Believing” by Journey

4. “Somebody That I Used To Know” by Gotye

5. “Moves Like Jagger” by Maroon 5

6. “California Gurls” by Katy Perry

7. “Bohemian Rhapsody” by Queen

8. “Alejandro” by Lady Gaga

9. “Poker Face” by Lady Gaga

類人猿も他人の思考を推測できる?

京都大学霊長類研究所によると、チンパンジー、ボノボ、オランウータンなどの類人猿は、「サリーとアン課題」(サリーはボールをカゴに入れて部屋を出ました。その後アンがボールを引き出しに片付けました。戻ってきたサリーはボールをどこから取り出すと思いますか?」という質問に対して、「サリーだったらどこを探すか?」という視点で推察して、「カゴの中」と答えるのが誤信念です)で有名な、他人の思考を推察する「誤信念」が理解できている可能性があると研究成果をまとめ、10月7日の科学雑誌『Scinence』に発表されました。

 

科学雑誌『Science』のページ

http://science.sciencemag.org/content/354/6308/110

京都大学霊長類研究所のページ

http://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/ja/publication/ChristopherKrupenye/Krupenye-Kano2016-Science.html

ジェットコースターで腎臓結石を排出できる

aアメリカのミシガン州立大学の研究で、小さな腎臓結石は、古いタイプのジェットコースターに乗っているだけで自然排出できる可能性が高いことが明らかになり、2016年9月の『Journal of the American Osteopathic Association』で発表されました。

この研究では、約4ミリサイズの腎臓結石が詰まった3Dレプリカを作成し、それを様々なタイプのジェットコースターに乗せて、実験を行ったということです。

その結果、「スペースマウンテン」や、「エアロスミスのロックンローラーコースター」など新しいタイプでは失敗が多かったものの、ガタガタよく揺れる古いタイプの「ビッグサンダーマウンテン」では、最後部に乗った場合に、64%の確率で腎臓結石が排出されることが確認できたそうです。さらに、結石が腎臓内の上部にある場合、ビッグサンダーマウンテンの最後部に乗ると、100%排出できることも明らかになりました。

通常、4ミリサイズの腎臓結石であれば、破壊砕石術は行わずに、自然排出を待ちます。今回の研究では、このレベルの手術が必要ない大きさの腎臓結石を使っていました。

しかし、ジェットコースターに乗るだけで、小さな腎臓結石が排出できるのであれば、知らないうちに大きくなって、急に激痛を感じて救急に運び込まれるような状況を避けることができますね。

Marc A. Mitchell, David D. Wartinger. Validation of a Functional Pyelocalyceal Renal Model for the Evaluation of Renal Calculi Passage While Riding a Roller Coaster. The Journal of the American Osteopathic Association, 2016

腸内細菌が多種多様だと内臓脂肪が溜まりにくい?

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イギリスのロンドン大学(キングス・カレッジ・ロンドン)の研究によると、人間の糞便中に含まれる腸内細菌などの微生物の種類と、内臓脂肪に相関関係があり、糞便中の微生物の種類が多種多様であると、内臓脂肪が少ないことが、イギリスの双子1313組を対象とした研究結果から明らかになり、2016年9月の『Genome Biology』で発表されました。

この研究は、1313組のイギリスの双子の糞便中の微生物のDNA情報を、被験者たちのBMIなどをはじめとする肥満に関する6つの項目を用いて分析した結果によるものです。その結果、肥満と糞便中の微生物の間には、相関関係があり、微生物が多種多様なほど、内臓脂肪が少ないことがわかりました。内臓脂肪は代謝異常を引き起こし、糖尿病や心血管病のリスクを高める要因でもあり、今回の研究では、糞便中の腸内細菌のコミュニティが、内臓脂肪の貯蔵や肥満に関係していることが推察されたため、今後も研究を進めて、糞便移植なども含めた、腸内細菌叢から体重や内臓脂肪を減らす方法について開発を進めたいと述べています。

 

Michelle Beaumont, Julia K. Goodrich, Matthew A. Jackson, Idil Yet, Emily R. Davenport, Sara Vieira-Silva, Justine Debelius, Tess Pallister, Massimo Mangino, Jeroen Raes, Rob Knight, Andrew G. Clark, Ruth E. Ley, Tim D. Spector, Jordana T. Bell. Heritable components of the human fecal microbiome are associated with visceral fat. Genome Biology, 2016

怒って運転すると追突事故を起こしやすい

カナダの研究で、攻撃性や怒りを抱えて運転すると、追突事故を起こしやすいことが明らかになりました。

この研究は、2002年から2009年の12,830人が回答したデータを分析したもの。

被験者の中で、前年に自動車で衝突事故を起こした人が8%おり、怒りや攻撃性を抱えながら運転すると、怒りを抱えずに運転する人に比べて、1.78倍も追突事故を起こすリスクが高いことが明らかになりました

また全被験者の中の約3分の1が、「運転中に攻撃性を感じた経験がある」という結果も出ています。

研究者らは、運転中にドライバーが、ストレス、怒り、攻撃性を抱えないように、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる方法や、音楽を聞いて心を和ませる方法、さらには長時間運転をする場合には、休憩時間を十分に取る必要があることなど、運転中のストレスや疲れを和らげる方法について、ドライバーに啓発する必要があると指摘しています。

Christine M. Wickens, Robert E. Mann, Anca R. Ialomiteanu, Gina Stoduto. Do driver anger and aggression contribute to the odds of a crash? A population-level analysis. Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour, 2016

中年期の運動習慣は認知症を予防する

ヘルシンキ大学の研究によると、中年期の運動習慣は、高齢になってからの認知症の発症リスクを低下させることが明らかになり、2016年9月の『Journal of Alzheimer’s Disease』で発表されました。

 

これはフィンランドの双子を対象としたコホート研究によるもので、66歳から97歳までの平均年齢74.2歳の双子3050人を対象に、運動習慣と認知機能についての関連性を調べた研究です。

 

そ の結果、中年期以降にウォーキングよりも負荷がかかる、適度に活発な運動を日常的に行っている人は、運動を日常的に行っていない人に比べて、認知機能が維 持されていることが判明。脳内の成長因子の量を増加させたり、シナプスの可塑性を改善させたりするといわれる運動の健康効果などが、実際に認知症を予防す るのに役立っている可能性が高いことが示唆されています。

 

Paula Iso-Markku, Katja Waller, Eero Vuoksimaa, Kauko Heikkilä, Juha Rinne, Jaakko Kaprio, Urho M. Kujala. Midlife Physical Activity and Cognition Later in Life: A Prospective Twin Study. Journal of Alzheimer’s Disease, 2016

 

失った手指の記憶を脳は30年以上も保持できる

GG095_L英国オックスフォード大学の研究によると、私たちの脳は、手や指を切断してからも、長期間に渡り、失った指や手の感覚(幻視感覚)を保持し続けていることが明らかになり、2016年8月の『eLife』に掲載されました。

この研究では、25年前、31年前に左手を失った2人の被験者と、右利きで両手を持つ11人について、脳の大脳皮質の中心溝の後ろ側(前頂葉の前側)にある「体性感覚野」(触角、痛覚、圧覚など、体が受けた感覚の刺激に関する情報を処理する場所)の動きを、7テスラ超高磁場MRIシステムで観察し、そのようすを比較しました。

その結果、左手を失って長期間が経過している人の脳においても、両手を持つ人と同じように、失った手の感覚を保持し続けていることが明らかになりました。

この結果について、研究者は、今まで失った手の機能を補うために、脳は新しい情報を習得していくために、古い感覚を失い、新しい情報と入れ替えに、新しい情報を保持するものだと思われていましたが、新しい情報と失った手の幻視感覚を長期間持ち続けることができることが明らかになり、今後のリハビリテーションの方法や、義肢の開発に、この研究成果を役立てたいと述べています。

幸せを感じながら運動すると健康効果が高まる

気乗りしないのに、スポーツクラブで運動したり、無理強いされて走ったりすると、せっかくの運動による健康効果が低下してしまうので、要注意! 

ドイツ南西部のアルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルグ校の研究によると、面倒くさいとか、いやいやながら運動を行うよりも、満足感や幸福感を感じながら運動すると、心理的なストレスも軽減して、運動の健康効果が高まることが明らかになり、2016年8月の『Journal of Behavioral Medicine』で発表されました。

この研究は、18歳~32歳までの男女76人を2つのグループに分けて、30分間の自転車こぎ運動をさせました。

①のグループには、サイクリングの健康効果を称賛する話やビデオを運動前に見せ、②のグループには見せませんでした。

その結果、サイクリングの健康効果を説明したグループの方が、より脳波が安定していることが明らかになり、さらに実際にも①のグループの方が不安感もなく、気分良く自転車こぎ運動を楽しめたことが明らかになりました。

研究者らはこの結果について、運動する際には、義務感や強制で、不安や苦しみを感じながら運動させるのではなく、より楽しくリラックスして心理的なコンディションを整えて運動することが、健康効果を高めるためには重要だと指摘しています。

Hendrik Mothes, Christian Leukel, Han-Gue Jo, Harald Seelig, Stefan Schmidt, Reinhard Fuchs. Expectations affect psychological and neurophysiological benefits even after a single bout of exercise. Journal of Behavioral Medicine, 2016