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一卵性の双子の男性は長生きするらしい
米国ワシントン大学の研究によると、男性の一卵性の双子は、どの年代においても死亡率が低く、長生きする可能性が高いことが明らかになり、2016年8月の科学雑誌『PLOS ONE』で発表されました。
この研究は、デンマークの双子3000組のデータを分析したもの。これによると、一卵性双生児は、男性も女性も、一卵性双生児でない集団よりも長生きであり、特に男の一卵性双生児が長生きであることがわかりました。
この理由について、研究者らは、双子は学校生活や結婚、出産などのライフイベントの喜びや苦労を共に分かち合え、心理的な支えになるため、健康で長寿なのではないかと推察しています。
David J. Sharrow, James J. Anderson. A Twin Protection Effect? Explaining Twin Survival Advantages with a Two-Process Mortality Model. PLOS ONE, 2016; 11 (5): e0154774 DOI
年をとると食が細くなる原因はペプチドYYが関係
年齢を重ね高齢になると、食が欲しくなり痩せ始めるのはなぜか?実は、あるホルモンの分泌によって、高齢者の食欲減退を引き起こしていることが英国プリマス大学の研究で明らかになり、2016年8月の『Appetite』に報告されました。
この研究は、80歳以上の健康な高齢者の女性6人と、健康な20~39歳、40~59歳、60~79歳の女性の食事摂取と、食欲に関連するホルモン分泌について比較したもの。
その結果、当初予測していた胃で産生されるペプチドホルモンで、脳の視床下部に働いて食欲を増進させる働きを持つ「グレリン」の分泌量には年齢による差が見られず、その代わりに、80歳以上の高齢者では、視床下部の受容体に作用して食欲を抑制する働きを持つ「血中PYY(ペプチドYY)」の濃度が上昇していることが明らかになりました。
ちなみに血中PYYは、食事の時の咀嚼回数を増やすことで、食後の分泌が促進されることが明らかになっており、よく噛むと満腹を感じやすくなるという定説を裏付けるホルモンとして知られています。
Mary Hickson, Charlotte Moss, Waljit S. Dhillo, Jeanne Bottin, Gary Frost. Increased peptide YY blood concentrations, not decreased acyl-ghrelin, are associated with reduced hunger and food intake in healthy older women: Preliminary evidence. Appetite, 2016
糖尿病患者におけるパーキンソン病予防にスタチンが有効かも?
台湾の高雄市立大同病院などの研究によると、台湾人の糖尿病患者では、高コレステロール血症の治療薬である「スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害 薬)」を服用していない患者に比べて、スタチンを服用している患者において、パーキンソン病の発症率が低いことが明らかになり、2016年7月の 『Annals of Neurology』オンライン版で公表されました。
この研究は、台湾人の糖尿病患者5万432人を対象にして行わ れ、このうち約半数がスタチンを服用していました。スタチンの非服用者と比較したパーキンソン病発症率のハザード比は、男性のスタチン服用者が0.60、 女性のスタチン使用者が0.65で、糖尿病患者におけるスタチン系薬剤を服用した場合のパーキンソン病の発症予防効果が認められたということです。
同様の疫学調査の結果が、2013年にも発表され、その作用機序については、脂溶性のスタチンが血液脳関門を通過して、脳内で発生している炎症を抑制することで、炎症によって受ける神経細胞のダメージを軽減しているからではないかという過去の報告があります。
Statin Therapy Prevents the Onset of Parkinson Disease in Patients with Diabetes, 29 July 2016, online Annals of Neurology;
中高年以降のボランティア活動は健康維持に役立つ
イギリスのサウサンプトン大学の研究によると、人生の後半でボランティアを行うことで、精神的な健康を維持できることが明らかになり、2016年8月の『BMJ Open』のオンライン版で発表されました。これはイギリスで1991年~2008年に実施された6万6千人余りを対象とした質問調査の結果を分析したもので、余暇の過ごし方、ボランティア活動の有無、精神的な健康状態、幸福感などについて質問しました。
その結果、中高年以降の人でボランティア活動を行っている人は、していない人に比べて、幸福度が高く、精神的にも身体的にも健康であることがわかりました。
しかし40歳以降の人々に関しては、ボランティア活動と幸福感や健康状態に関しての相関性はなかったそうです。
【出典】
Faiza Tabassum, John Mohan, Peter Smith. Association of volunteering with mental well-being: a lifecourse analysis of a national population-based longitudinal study in the UK. BMJ Open, 2016; 6 (8): e011327 DOI: 10.1136/bmjopen-2016-011327
アイスバケツチャレンジ収益125億円、ALSの新たな原因遺伝子NEK1を特定
2014年夏から世界各国に広がった、バケツに入った氷水を頭からかぶって筋萎縮性軸索硬化症(ALS)の認知理解と寄付金を集めるキャンペーン「アイスバケツチャレンジ」をご覧になった人は多いことでしょう。
Facebookには1700万人が氷水をかぶる動画を投稿し、4億人以上がそれを再生して視聴したそうで、1億1500万ドル、およそ125億円の寄付金が集まり、その一部が6つの研究プロジェクトの支援金として使われました。
6つのプロジェクトの中の1つである「プロジェクトMinE」の研究成果が2017年7月に
今回の新たな原因遺伝子「NEK1」
http://www.bbc.com/news/health-36901867
赤を見ると悪ふざけをしたくなるタイプの人って?!
赤信号を見ると人は誰でも危険を察知して止まったり、中断したりして行動を抑制するもの です。つまり一般的に「赤」は社会のルールや法令を遵守するための色として使われていますが、米国イリノイ大学の研究によると、ある「性向」のある人は、 赤を見るといたずらをしたくなったり、他人の期待に反して悪ふざけをしたくなったりすることが明らかになり、2016年5月の『Journal of Consumer Psychology』のオンライン版に発表されました。
赤を見るといたずらや悪ふざけをしたくなる傾向が強いのは、「sensation seeking」日本語では「刺激欲求性」 が高い人で、ホラー映画や刺激の強いアクション映画などを好んだり、遊園地に行って絶叫系の乗り物に好んで乗ったり、危険を顧みない行動を取ったり、身体 的な痛みを伴う刺激を好んだりするのが刺激欲求性の高い人の例で、刺激欲求性の高い人は、赤い色を見ると、危険を察知して行動を抑制するどころか、刺激を 求めていたずらや悪ふざけをしたくなる傾向が強いということです。
この結果について研究者らは、赤がすべての人々に対して社会ルールの遵守を想起させる色ではなく、刺激欲求性が高い人は、赤い色の視覚的な刺激につられて、危険な行動を侵さないように、注意を払う必要があると述べています。
Ravi Mehta, Joris Demmers, Willemijn M. van Dolen, Charles B. Weinberg. When red means go: Non-normative effects of red under sensation seeking. Journal of Consumer Psychology, 2016
不況はがんより怖い! リーマンショック後にがん死亡者数が急増していた
ハーバード大学、ロンドン大学、オックスフォード大学などが大規模な調査結果を分析した結果、不況の影響によってがん関連死が増加することが明らかになり、2016年5月の『Lancet』で発表されました。
こ の研究は、1990年~2010年までの世界70か国以上、20億人に関するがん死亡者数、失業率、医療関連支出などについて分析したところ、2008 年~2010年の俗に言う「リーマンショック」の期間は、他の期間に比べて、約26万人も過剰にがんの死亡者が多かったということです。
この調査結果によると、2008年~2010年のリーマンショック直後の期間には、治療可能と思われる前立腺がん、大腸がん、乳がんによる死亡者数の増加が目立っていたことも指摘されました。
伊 勢志摩サミットや消費税引き上げ延期の発表で、安倍首相が使っていたことでも注目されている「リーマンショック」は、2008年9月にアメリカの大手証券 会社リーマン・ブラザーズが経営破綻したことから始まった世界的な金融危機。低金利で低所得者向けに住宅ローンを貸し付けて、地価が高騰し、景気が上昇す ると思われた矢先に大不況となり、ローンを払えなくなった人々が次々と住宅を売却したため地価も暴落。住宅ローンを貸し付けていたリーマンブラザーズも、 経営が悪化して倒産。その余波が世界の金融機関に飛び火して、世界的な金融不況となりました。
Economic downturns, universal health coverage, and cancer mortality in high-income and middle-income countries, 1990–2010: a longitudinal analysis. The Lancet, May 2016
ヒトのフェロモンと嗅覚と性行動の関係
オレの話を聞け!というときの超カンタンなコツ
パーティーなどで挨拶のスピーチをするとき、どうすればより多くの注目を集められるでしょうか? ワイワイガヤガヤ状態の会場で「オレの話を聞け!!」と叫びたくなる人も多いのでは…そんなときの超カンタンなコツが、研究成果として発表されていました。
話を始めるときに、低い声で話し始めると、人々の注目をより多く集められることが、米国イリノイ大学の200人規模の成人を対象とした2つの実験結果で明らかになり、2016年5月の『Journal of Experimental Psychology: General』に掲載されました。
こ れは、動物が余分なケンカや殺し合いをしないために、「雄叫び」を上げて威嚇する際に、より低い声を出したほうが、相手は怯えて敗北を認めるという習性に も通じるものだそうです。犬や猫もケンカが始まる前は低い声で威嚇して、高い声でキャンキャン叫びながら逃げますよね。
たしかに、演説の冒頭に低い声でパンチのあるひと言が出れば、おしゃべりをやめて、食べるのもやめて聞いてみようかなという気持ちになりそうです。
ただし、この研究結果では、低い声で演説をする人に対して、優位性は感じるものの、尊敬や魅力を感じる人は少なかったようです。それは、スピーチの中味の問題ですね!
Listen, follow me: Dynamic vocal signals of dominance predict emergent social rank in humans.. Journal of Experimental Psychology: General, 2016
夫婦仲が悪いほうが男性が糖尿病になりにくい
米国ミシガン州立大学の研究によると、男性は夫婦仲が悪いほうが糖尿病の発症が遅く、糖尿病を発症した後の治療の成績が良いことが明らかになり、2016年5月の『The Journals of Gerontology 』に掲載されました。
しかし、女性の場合はまったく逆で、夫婦仲が良いほうが糖尿病を発症するリスクが低いそうです。
これは、57歳~85歳の1228人の既婚男女を5年間追跡調査した結果によるもので、このうち389人が調査期間中に糖尿病を発症していました。
こ の結果について研究者は、男性の夫婦仲が悪いという評価軸には、「妻が口うるさく、がみがみ言う」という部分が大きく影響しており、夫婦仲が悪いカップル の妻は、夫が糖尿病にならないように、または発症後に糖尿病が改善するように、口うるさく夫の食事のことや生活習慣のことを指摘することで、糖尿病の予防 や治療効果の向上に良い影響を与えているのではないかということです。
妻のケースについての分析コメントはありませんでしたが、推測する に女性側の夫婦仲が良いという評価軸には「夫婦の会話が多い」「相手が自分に関心を持っている」という要素が大きいと思われるため、夫婦仲が良いほうが糖 尿病リスクが低く、夫婦仲が悪いと評価する妻は、「どうせ夫は自分に関心がないから、どうなってもいい!」と思い込んでしまうことで、糖尿病リスクが高ま るのではないかと考えました。
Diabetes Risk and Disease Management in Later Life: A National Longitudinal Study of the Role of Marital Quality. The Journals of Gerontology Series B: Psychological Sciences and Social Sciences, 2016