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入浴中の軽い運動でメタボ予防?

 

ツムラライフサイエンスと鹿児島大学の共同研究によると、硫酸マグネシウム入りの人工炭酸泉に入浴中に柔軟体操を行なうことで、「善玉脂肪細胞」と呼ばれ、筋肉や肝臓の脂肪燃焼を活発にして、動脈硬化メタボリック症候群のリスクを低下させることで注目されている「アディポネクチン」の数値が上昇することがわかりました。

入浴したお風呂は41℃10分間。その中で「肩すぼめ運動」や「体の回旋」、「足伸ばし」や「足持ち上げ」という軽い運動を行いました。

被験者は8人で、硫酸マグネシウム含有炭酸ガスを入れたお風呂と何も入れないお風呂(さら湯)に入った場合で比較しました。

この結果、さら湯よりも炭酸泉の方が筋肉の緊張や疲労感、肩こり、軽快感、リラックス感が改善し、深部の体温や皮膚の血もより高くなりました。

またさら湯では、上昇が見られなかったアディポネクチン量が、炭酸泉ではわずかな上昇が見られました。

N数が少なく、因果関係などもハッキリしませんが、アディポネクチンを上昇させる効果的な方法として、入浴中の軽い柔軟体操がどの程度効果があるのか、次の研究結果が待たれます!

 

甲状腺がんが増えるアメリカ

 

アメリカのチェンAY博士らが『Cancer』のオンライン版で報告した内容によると、アメリカでは1988年から2005年の間に甲状腺がんが増加していることがわかりました。

調査は1988年から2005年の間に甲状腺がんになった30766人を対象に行われ、1988年では、女性10万人に6.4人の発病率だったものが、2005年には14.9人に増加し、男性も2.5人から5.1人に増加していました。

さらに最も多かったのは1センチ未満の小さな腫瘍の発見でしたが、4㎝以上の大きな腫瘍の発見も増加していることが明らかに。

この結果について「環境、食生活、遺伝子などの要因のほかに、何か甲状腺がんを増加させる要因があるのか否かについて研究を進めていくべき」とチェン博士は述べています。

Primary source: Cancer
Source reference:
Chen AY, et al “Increasing incidence of differentiated thyroid cancer in the United States, 1988-2005” Cancer 2009; DOI: 10.1002/cncr.24416.

愛情ホルモン? オキシトシン

 
イスラエルのバル・イラン大学のR.フェルドマン博士らの研究によると、妊娠中にオキシトシンと呼ばれる、ホルモンの血中濃度が高い女性ほど、生まれた赤ちゃんを可愛がるということが明らかになりました。これまでオキシトシンは、ほ乳動物の研究で「愛と絆」のホルモンであるとされてきたものの、人間での研究はほとんど行われてきませんでした。研究では、妊婦62人を対象に、妊娠第一期(13週目まで)、第三期(28~41週)、出産1カ月後の3回にわたって、血中オキシトシン濃度が測定されました。また出産後には、母子関係を調査するため、母親の行動観察やインタビューが行われました。

その結果、妊娠初期の段階でオキシトシン濃度の高かった母親ほど、赤ちゃんへの「見つめる、あやす、優しくなでる、様子の変化をチェックする…」という行動がより顕著で、わが子とのかかわりが多く見られたといいます。博士は、この結果から、妊娠初期のオキシトシン濃度で、出産後の母親の養育態度と母子の絆の深さを予測できるとしています。
(Psychological Science 2007年11月号

人はなぜ睡眠不足で不機嫌になるか?

 
米国・ハーバード大学医学部と、カリフォルニア大学バークレー校の研究チームによると、睡眠不足状態は、嫌な出来事に直面したとき、脳の情動(感情)中枢に過剰な反応を引き起こす原因となることがわかりました。この研究は、26人の健康な被験者を、普通に睡眠をとるグループと、眠らないグループに分け、35時間経過した後、FMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって脳の活動状態が測定されました。画像を分析した結果、不眠を強いられたグループは、普通に睡眠をとったグループに比べ、被験者たちの前頭葉(感情をコントロールする領域)の活動が非常に低下していました。一方で、感情に反応する領域の活動は60%以上も活発だったことがわかりました。そのため、脳がより原始的な状態に引き戻され、理性よりも情動に突き動かされるようになり、嫌なことに対して過剰に反応してしまうのだそうです。これについて研究チームは、“睡眠不足が不機嫌や負の情動を招く”ということが脳神経科学的に初めて証明されたとしています。

(Current Biology 2007年10月23日号)

不老のカギはカロリーオフ?

 
カロリー制限による老化の抑制に関しては、ラットやマウスなどのげっ歯類の研究では報告されていましたが、人間により近い霊長類での報告は初めてです。

ヴァインドルッヒ博士によると、1989年に実験を開始し、76匹のサルのうち半分を通常の食事、その半分を30%ほどカロリーを抑えた低カロリー食にして比較しました。

その結果、カロリー制限しないグループでは、糖尿病のサルが5匹、11匹が糖尿病予備軍になった一方で、低カロリー食のサルのグループには、糖尿病になるサルはいなかったそうです。

また、低カロリー食のサルのグループでは、腫瘍の発生が、通常食のグループに比べて50%も少なかったそうです。

さらに、心血管障害についても、通常食のサルのグループに比べて、発症率が半分だったそうです。

また、脳の萎縮についても、カロリー制限をしたサルのグループでは、明らかに萎縮のスピードが遅く、脳の老化がゆるやかであることがわかりました。

ヴァインドルッヒ博士は、カロリー制限したサルのグループが、「内面的な健康を保持するだけでなく、見かけも若々しい」ことを指摘しており、さらに研究を進めてカロリー制限による老化抑制のメカニズムを解明するそうです。

また、博士は、人間にとって食生活を改善して、カロリー制限をすることはかなり難しいことではあるが、この研究を進めることで、新薬を開発して食生活を極端に制限せずに、カロリー制限した場合と同じような効果を発揮して、健康長寿に結びつくようなことも可能かもしれないと示唆します。

Primary source: Science
Source reference:
Colman RJ, et al “Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys” Science 2009; 325: 201-04.

音楽が血圧や心拍数に与える影響

 
イタリアのパヴィア大学ルチアーノ・バーナーディ教授らが、6月30日付の『Circulation』という雑誌で紹介した内容によると、心血管の動きや心肺機能は、音楽の強弱やリズムによって影響を受けることが、音楽療法を用いた実験で明らかになりました。

「音楽が心肺機能や心血管にもたらすメリットをうまく利用して、血圧の上昇を抑制することもできるかもしれない」と博士は述べています。

実験は平均年齢25歳の24人を対象に行われ、被験者の半数がコーラス(歌唱)の経験があり、のこりの半数は音楽のトレーニングを行なったことがありませんでした。

被験者は横になり、リラックスして目を閉じながらヘッドフォンで音楽を聴きました。使った音楽は、

①ベートーベンの交響曲第9番のアダージョ
②プッチーニのトゥーランドットから、叙情的なアリア「誰も寝てはならぬ」
③バッハのカンタータBMW169
④ヴェルディーのオペラ、「ナブッコ」から「行け、我が思いよ」
ヴェルディの「椿姫」から「乾杯の歌」

この結果、音楽のクレッシェンド(だんだん大きくなる)や強調などによって、血圧や心拍数の上昇や血管の収縮などが誘発されたそうです。

特にプッチーニの「誰も寝てはならぬ」は、心血管に与える影響が大きく、バッハのカンタータは、心血管の緊張を緩める効果があるそうです。

研究結果では、コーラス(歌唱)の経験がある人とない人の差は見られなかったようです。

心拍数や血管の収縮(自律神経系の反応)には、音楽の強弱(クレッシェンド)やリズムの速さに同調する傾向があり、この特徴を音楽療法に生かして、心血管障害の治療や予防に役立てることができるかもしれないとバーナーディー教授は述べています。

ストレス解消が生活習慣病につながる?

 

 
 
アメリカ心理学会の調査によると、アメリカ人の3人に1人は極度のストレスを抱えており、ストレスによる過食や飲酒、喫煙に走ってしまう人もいるようです。
調査に応じた18歳以上の、成人男女1848人のうち約50%が、過去5年間にストレス度が急上昇したと感じており、ストレスによって人間関係の悪化、仕事の生産性の低下、健康上の問題が生じていることがわかりました。
主なストレスの原因には「仕事」と「金銭」をあげており、約半数の人が住宅ローンや賃料がストレスになると述べています。また約75%が、頭痛、慢性疲労、体の凝り、不安感や不眠などに悩んでいると答えました。
こうしたストレスにより、調査対象者の半数が「家族や友人との人間関係が上手くいかなくなった」としており、仕事と家庭の両立に悩む人も31%に上りました。
また、調査対象者の43%が「ストレスのために体に悪いものを食べたり、過食したりしてしまう」と回答し、調査対象の39%を占める飲酒者および19%を占める喫煙者は、「ストレスがひどいときに飲酒量、喫煙量が多くなる」と答えているなど、将来の生活習慣病につながるストレス解消法が多くみられた調査結果となっています。

不安症の人は携帯電話に依存する

 
自分は不安症だと思う人々を対象に行った調査で、彼らが携帯電話に依存したり、携帯電話を濫用している、と回答した割合が非常に多いことを、米国不安障害学会の総会で、フロリダ大学のリサ・メルロ博士と、アマンダ・ストーン博士がポスター発表しました。

不安症の人々は、電子機器の普及で「自分が他人と常に交信可能な状態にいないといけない」というプレッシャーを強く感じるようになり、「携帯電話嗜癖(しへき)」ともいえる症状を示したり、携帯電話への異常な執着を示しています。

例えば強迫神経症の人が携帯電話を使って物事を確認するように、不安症の人たちも携帯電話を使って心の健康を管理しようとしているように見えます。

調査は平均30.4歳の18歳から75歳までの男女で、携帯電話使用歴が平均7.2年の183人の被験者(そのうち66%が女性で36%は学生)を対象に、携帯電話や携帯機器への依存に関する質問24個と、携帯電話や携帯機器の濫用に関する質問14問、合計38問に回答してもらいました。回答は「大いにそう思う」が5点で、「まったくそう思わない」が0点の5段階選択形式をとりました。

携帯電話依存の質問は以下のとおり:
・携帯電話の電波が弱いところにいるとリラックスできない。
・自分は携帯電話に時間を費やしすぎている。
・長い時間電話が鳴らないと、携帯電話のスイッチを確認してしまう。

この結果、回答者の平均スコアが62.6±18.5点で、最低が26、最高は117点の正規分布を示しました。調査結果は、「携帯電話が使えると安心する」、「携帯電話を使いすぎているという強迫観念の強さ」、「携帯電話に対する感情的な嗜癖(しへき))」などの携帯電話依存の兆候を表しています。

一方で被験者たちは携帯電話の濫用することで、仕事や学業、人間関係への支障や経済的な負担などについて重大な問題を抱えているとは回答していません。

不安症を評価するに当たり、携帯電話に強く依存しているかどうか、携帯電話をかなり濫用しているかどうかという点に着目することは、有意義でしょう。

今後の研究では、携帯電話への依存や濫用が不安障害にどう関係して、どんな悪影響を及ぼすのかを調べることが必要とされます。

肥満、高血圧を招く睡眠不足

 

 

米コロンビア大学が1万8千人のデータを分析し、平均睡眠時間4時間の人は、7~9時間の人に比べて73%も肥満と判断される割合が高いことが判明。

睡眠不足は食欲を抑える「レプチン」というホルモンの分泌を低下させて、食欲を強める「グレリン」の分泌を増やすのが理由と考えられます。

また睡眠中にはビーマルという脂肪細胞の分裂を促進する遺伝子が働きますが、ビーマルを持たないマウスは皮膚がベタつき、寿命も短いという報告もあります。

シカゴ大学が平均年齢40歳の578人を対象に行った研究によると、睡眠時間が1時間少ないと高血圧になる確率が37%高まるそう。高血圧は酸素や栄養を全身に運ぶ血管の壁を傷つけ、動脈硬化を起こす原因になります。

睡眠不足は高血圧、肥満、脂質代謝異常などを起こして、内臓を写す鏡ともいわれる肌の状態にまで悪影響を及ぼすことが考えられます。

 

食べても満足しない脳の秘密

2008年10月17日発行の『Science』に掲載されたオレゴン研究所のエリック・スタイス博士らの研究によると、食べ過ぎて肥満することは、脳のドーパミンなどの喜びを感じる神経伝達物質の分泌が十分でないことに関連しているかもしれないそうです。

この結論は、太った若い女性は、チョコレート・ミルクシェーキを飲んだときに、同世代の痩せた若い女性よりも、ドーパミンの分泌が少ないという今回の結果から、導き出されました。「つまり太ってしまう人は、痩せている人よりも、食べることに対する喜びを感じる脳の感受性が弱いのかもしれない」ということです。

実験は平均年齢15.7歳、平均BMIが24.3の33人の肥満ではない一般的な女性のグループと、平均年齢20.8歳で、平均BMIが28.6のやや肥満気味の43人の女性のグループを対象に行われ、甘くておいしいチョコレート・ミルクシェーキと、味のない液体を飲んだときの、MRI画像による脳の反応と、血液検査の結果を比較しました。

以前までの実験では、食事を摂ることによって、大脳基底核の「背側線条体(新線条体)」でドーパミンレセプターが放出されて、喜びや満足感を感じることがわかっています。

今回の実験によると、おいしいミルク・シェークを飲んだとき、肥満していないスリムなグループは、大脳基底核にある「尾状核」(左側)が刺激されて、活動が活発になることがわかりました。

***この「尾状核」が刺激されると、食欲が抑制されます。これは、霊長類の脳の「尾状核」を電気的に刺激すると、バナナを見ても欲しがらなくなるという実験からも明らかになっています。

また、今回の研究で、ドーパミンレセプターの数を少なくすることに関係する、A1対立遺伝子(TaqIA制限酵素断片長多型)の存在が、左の尾状核の活動を低下させて、肥満させることに関連することが示唆されています。

つまり、食べ過ぎて太ってしまう人は、背側線条体でのドーパミンの放出が少なく、そのために、食べることによって放出されるドーパミンの量も少ないので、食欲を満たすことができず、普通の人よりも多く食べてしまい、肥満になるのかもしれないことや、その背景には、太っている人が、ドーパミンレセプターを少なくするA1対立遺伝子を持っていることが関係していることを示唆しました。